目に見えないものの価値は理解されにくい

これはごくごくシンプルなWebサイト制作でもある話だなと思う。

「Life is beautiful: 建物と違って、一見簡単に修正が利きそうなのがソフトウェアの問題点かな、と」に書かれている話は、Web媒体と印刷媒体の対比でも似たようなことを感じる。そもそもWebを印刷媒体的に捉えること自体間違っているという議論はひとまずおいて、とにかくWebページというのは、ソフトウェアなんかよりもずっと簡単に書き換えられるものだ。本当に緻密にデザインされたサイトの修正は、実は案外に手間のかかるものなのだけれど、客というのは実際よりもずっと簡単に考えていたりする。で、納品後まで色々いってくる客は少なくない。

もちろん見積もりを工夫して、多少の出戻りくらいならまだある程度利益が出るように調整したりはする。瑕疵担保期間みたいなものを付記したりもする。それでもダメな客はダメである。随分と気軽にこちらの業務を邪魔してくれる。やれこの1文を追加しろ、やれあの画像に「New!」マークを入れろ、やれ連絡先からFAX番号を削除しろなどなど、ひとつひとつは実に他愛のない作業内容である。しかも、まとめていってくるのではない。ちょこちょこと気付いた尻からいってくる。こちらのミスではないのだから担保されるべき瑕疵ではない。追加作業である。

これを「別料金になります」などといって見積もれるか。大抵は否である。会長の奥さんの下の名前が間違っていることに気が付いたんだ直してくれとかいわれて、それでは後ほど見積書をお送りします、発注頂き次第作業させて頂きますので宜しくお願い致しますなんて話がすんなり通るほど大阪の空は青くはない。下手をすると、トップページにバナーをひとつ作って置いて欲しいなんて話ですら、お金がかかるとは思っていませんでしたとくる。それほどWebの改定作業というのは軽く見られている。これが印刷なら毎度毎度刷り直しである。あり得ない。

印刷なら間違って刷ればそれはゴミである。お金がかかっていることが、文字通り手に取るように分かる。だから、刷ってしまってから、ここにハートマーク入れたら可愛いかもとか思っても、ハートを入れて10万部刷り直せなんて指示を出すクライアントはまずいない。ところが、Webだとこれがいえてしまうらしい。損失の姿が見えないせいだろう。こんな客はそもそも仕事の価値を見誤っている。印刷だって手に取れる成果物が仕事の本質なのではない。それを生み出す知恵や技術に対して対価を支払うのが本当である。紙代やインク代の問題ではない。

こうしたことを一から客に理解してもらうのもぼくらの仕事の内なのかもしれない。

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