note は人気者のためのお布施サービスに落ち着くのか?

どこでだかは知らないけれど、いま話題の note

とにかく簡単に有料ページが作れる。これが、note のほぼ唯一にして、最大の強みだ。登録からものの数分で「続きを読む(有料)」なコンテンツが公開できる。手軽すぎて怖い。そこでは投稿されたコンテンツのことをノートと呼ぶのだけれど、ノートは無料で公開することもできる。が、課金がなければ、140字縛りのない Twitter みたいなものでしかない。

もちろん、縛りのない Twitter に意味なんてない。note を使うなら「売る」か「買う」かその両方か、だ。売るもののないぼくは、ウインドウショッピングのつもりでアカウントを作った。黎明期特有のぬるい空気の中、ぴょろぴょろと小銭が舞っている。note の外で見たことのあるアカウントを適当にフォローして、適当にノートを買ってみる。

最初に買ったのは岡田育というひとのノートだった。これはマイナビニュースの連載で名前を知っていたから手始めの安牌として買ったにすぎない。もちろん面白かった。しばらくウロウロしているうちに迷子になって、まったく知らないひとのノートも買ってみた。ほっこりした。自分でもこれは、黎明期の「気分」がそうさせているだけなんだろうな、と思った。

そして、すぐに飽きた。

やっぱり、売り手思考にならなきゃ note は楽しめないんだ!岡田育氏のノートの影響もあって、そんな風に思い直した。そして、ブログの延長くらいの軽い気持ちで有料ノートを公開してみた。気持ちいいくらい売れない。当たり前だ。ぼくがユーザーでも買わない。実は買ってくれた人もいるのだけれど、いまは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

ぼくみたいな無名の素人が商品を店先に並べる以上は、少なくとも自分だけはその価値を信じているべきだ。価値の根拠は自らの信念以外にない。自分で100円の価値がないと思うものを、他人に100円で売ってはいけない。買う前に品質を確認できないとなれば、なおさらだ。ブログにアフィリエイトやアドセンスを仕込むのとは話のレイヤーが違う。

売れても心苦しい思いをするだけだ。

ともあれ、しばらく遊んでみてわかったのは、note は「作品を買う」ためのサービスではない、ということだ。だから、「買いたいものを探す」手段がない。すべては「面白そうなノート」ではなく、「面白そうな人」探しから始まる。そこがフリマ的なものとは違う。「おすすめユーザー」があって「おすすめノート」がないのは象徴的だ。

つまり、note はその設計思想からして、作品本位ではなく作者本位なのである。作品をきっかけに未知のクリエイターを知る、という方向性のサービスではない。買い手の立場からは、既知のクリエイターを探してファンとして振る舞う以外にやることがない。それは、note というサービスが想定している本来の使い方でもあるんだろう。

それじゃあ、売り手にとってはどうか。

こうした属人的なプラットフォームは、クリエイターに新たな希望を与えるだろうか。残念ながら、答えは否だろう。公式のコピーに「クリエイターとファンの、まったくあたらしい交流のかたち」とあるけれど、ファンのいない無名のクリエイターにできることは、ほとんどない。作品の力で注目を集めるような仕組みは note にはない。

再三名前を出すけれど、岡田育氏は最初の3日半で note での売り上げが5万円を超えたという。その内の1%程度の貢献を免罪符にする気はない。が、率直にいって、買った文章そのものに、たとえば大好きなマンガの単行本1冊に比肩する価値があったとは思わない。分量的にも内容的にも「著名人の余技」の域を出るものではないと思う。

けれども、新サービス開始直後のこの時期に、氏の反応や思考の一端を、ほぼリアルタイムに読むことができる、その「体験」については十分に500円分以上の価値があったと思っている。そして、note だからこそ、ああいった価値を即時マネタイズすることが可能だった。これこそが、note の新しさであり、可能性なんだろうと思った。

note の魅力の源泉は著作者との距離感の近さや即時性、直接対価を支払うことができる満足感あたりに集約できるように思う。裏を返せば、「ちゃんとしたものをちゃんとした形で売る」のには向いていないということでもある。品質に対する信用やコストパフォーマンスについては、ウェルメイドな既存メディアに到底かなわない。

note が切り開いたもっともあり得そうな可能性は、「それなりに名の知れたクリエイターが、これまで既存メディアに乗せられずマネタイズできなかった何らかの価値を、直接ファンに向けて売ることができる」という、かなり限られたもののように思える。いまのところ、信者のいないクリエイターや信心のない素人に出番はなさそうだ。

個人的には、名前ではなく作品を介して出会う仕組みがあればな、と思う。


【 2014.04.15 追記 】

いつのまにか個別ノートの戻るボタンの隣にシャッフルボタンが付いた。作品との出会い、という意味では面白い機能だと思うけれど、まったくのランダムらしく玉石混交…というか、玉が出なさすぎてつらい。やっぱりなんらかのキュレーションは必要な気がする。

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管理人イメージなりゆきでlylycoなんて名乗るも性別は男。自室にテレビがない。自然、本とインターネットが主な情報源となる。速読技術がないため遅読。実用書より小説を好む傾向あり。食も知も雑食を旨とするも思うに任せず。京都在住、大阪勤務のデザイン系会社員。

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