- 適当に働いて、適当に遊んで、適当に生きて死ぬ
- この宇宙には結婚して“自由”が減る世界と増える世界がある
- 何者でもないぼくの「自己愛」の自分史
- 婚活男女が求めているものは結婚ではない何か
- 何をやっても「面白くない」のは何故か?
- ネト充もリア充も会社充もみんな勝ち組である
- 嫌なことを後回しどころかやらずに生きる方法
- こんな時代に人生設計などすべきではない
- 完璧主義という便利ないい訳
- 人生が変わらないことは何かをやらない理由にはならない
- 安っぽい自己啓発が共感を呼ぶ本当の理由
- 意図せぬ抑圧、或いは、同調圧力の犯人はあなた自身
- あらゆる価値付けを悪だと叫ぶ二元論者のあなたへ
- 無意識に自分の価値を過小評価する人
- 効率化を考えるのは最後の最後でいい
- 匿名ダイアリーの自分語り=物語化という病
- 人生の勝ち負けを決めるのは誰か?
- 世の中を動かすのは個人の意思を超えた何かである
- 他人の弱さを不快に感じる人の弱さ
- 社会に出る前に捨てておくべき3つの財産
- 学校は人間をGoogle化するためにあるのではない
- 成果を出せない人なんてひとりもいない
- 将来に希望を抱けない?何温いこと…
- 学歴と知と実利とは根本的に無関係
- 誰にも強く否定されない目標は夢ではない
- 仕事どころか何もかもが暇つぶし、から始まる愉しいM人生
- 「仕事」の半分は「きれいごと」でできている
「ぼくは年間500冊」「私は質の50冊」「オレは本より実体験」
本について自らのスタンスを表明する人は多い。
ぼく自身もいつかやらかしたような気がするし、わりと誰しも通る道なのかもしれない。いうこともだいたい決まっている。タイトルはその典型。顕在化するパターンにまで典型があって、まず、読書量を自慢気に発表しちゃうウッカリ者が現れる。それが100冊だろうが500冊だろうが本人にとっては「つい発表したくなっちゃうような読書量」だったのだから「へえ、凄いね」といって印象に残った本の話でも訊いてやればいいのである。が、よほど腹に据えかねるのか、今度は水を差すウッカリ者が現れる。曰く「読書は量より質だ」或いは「書を捨てよ、町へ出よう」
本をたくさん読むのは悪いことじゃない。上には上がいるとわかっていても、初めて100冊に達した年の瀬につい吹聴したくなる気持ちはよくわかる。書店に平積のミステリやラノベやビジネス書や自己啓発書、雨後の筍のごとくに湧いて出る新書など多読に向いていそうな本はいくらでもある。こういう「一般に読みやすいだろう本」ばかり読んでいるのだとしても、本人が愉しいならこれは大変に有意義な読書である。たくさん読まなきゃ得られない体験もあろう。このスタイルが性に合わない、或いは、卒業したとからといってわざわざ腐してみせるなどは無粋である。
一方、より難解な専門書、より晦渋な文学、より実践的な実用書なんかをじっくり精読する人が、「自分は質の高い読書を満喫している」と吹聴したくなる気持ちもよくわかる。難解な本を読み通すことで得られる快感というのは確実にあるし、晦渋だからこそ味わえる妙味というものもある。実践的な読書のお陰でビジネスパーソンとして成長著しい自分を発見する、というのもこのご時勢なら強力な自己承認をともなう立派な娯楽だろう。これもまた有意義な読書である。精読することでしか得られない体験もあろう。が、その意義は量の読書を否定するものではない。
それら読書派を横目に、恋愛に勤しみ、インドを旅し、山に登り、ボランティアに参加し、世界を肌身で感じている人が、「自分は机上では得られない実体験を積んできた」と吹聴したくなる気持ちもわかる。恋も旅も喜びも悲しみも、或いはありふれた人間の生や死も、頭と体とでは理解の仕方に違いがあるのは当然だ。実体験がもたらす圧倒的で明文化し難い実感に人生の真実を幻視する。これまた魅力的な娯楽であり、実に有意義である。実践でしか得られない体験もあろう。が、机上で得られる体験と町で得られる体験は、包含関係や上下関係にあるわけではない。
量の読書で充実している人と、質の読書で充実している人と、町に出て充実している人が、それぞれの充実を主張するために互いを否定しあう必要はない。隣人の承認欲求がちょっと顔を覗かせたくらいでフルボッコに叩き潰してやらずともよかろう。彼我の意義は並び立たぬものでもない。それでも叩く人がいるのは、主張の内容いかんに関わらず「叩きのめす」こと自体がひとつの娯楽だからだろう。誰かを叩くことで全能感なり自己肯定感なりを得るというのもまた、有意義な人にとっては有意義な人生の愉しみ方だろう。その人なりの人生の妙味があるに違いない。
いずれ、人生の意義、幸福といったものの多様性を否定することは、自らの可能性を狭めることでもある。
posted in 12.01.23 Mon
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