ホームレスだとか労働だとかの議論の対象を適当に整理する

ホームレスやら労働者やらの議論は確かに面白い。

まあ、皆ほんとに労働しない(と思われている)人嫌いだよね - 猿゛虎゛日記(ざるどらにっき)
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面白いんだけれども、どうも想定しているホームレスや労働者が論者によってバラバラな気がしてややこしい。誰が誰に怒っているのか、誰が誰を見下しているのか、誰が誰を救うべきだと主張しているのか、色んなレイヤーで意見や感情がぶつかり合っていて、だんだんわけが分からなくなってくる。そんな混沌もネット的には全然大歓迎で、どんどんやって欲しいんだけれども、たまには一定の視点から適当に整理してやるのもいいかもしれない。そんなわけで、議論の対象となっているホームレスやら労働者をいい加減に腑分けしてみる。少しは風通しが良くなるかもしれない。

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タイプ01:「労働したい」が、労働できない「非労働者」

重度の障害者やら重病人といった人たちに代表される非労働者。多くの人が福祉の対象として妥当だと考えているような印象を受ける。少し前に話題になった京都の母殺しの件のように、肉親の介護のため失職に追い込まれるようなケースをここに含めるかどうかは意見の分かれるところかもしれない。たとえば、労働できない「非労働者」である母親に対して適切な福祉がなされていれば、息子の離職は防げたかもしれないと考えるなら、福祉のシステムエラーが生んだ2次被害ということもできる。また、ない袖は振れないという現実に直面したときどうするのかという問題もある。

タイプ02:「労働したい」が、就職できない「ホームレス的な労働者」

この場合の労働は「空き缶拾い」だとか「拾得雑誌の販売」だとかその手の労働だ。フルタイムで働いても日給数百円というような低収入である場合も少なくない。日雇い労働の口がある人は比較的恵まれているといえる。代表的なのは、雇用されたい気持はあっても年齢的に厳しいとか社会に適応しにくい性格であるとか市場価値のある職能を持たないとかいった理由で就職が難しい人たちである。彼らはそもそも「非労働者」だと見做されているケースも散見される。いわゆる自己責任論の対象になりやすいタイプでもある。福祉の対象としては幾分厳しい目で見られやすい。

タイプ03:「労働したい」から、労働している「労働者」

色んな意味で幸せなタイプの人々である。自分たちは搾取されている。労働者なんて所詮は社会の奴隷だ。労働なんて下層民のやることだ…そんなネガティブな発想とは無縁である。或いは、そうした思想の存在を認識していても主観的には労働を心から愉しみ、生き甲斐とすることができる。また、現実に搾取されていようがなんだろうが、労働者としての自分が幸せなら関係ないというポジティブな心性に守られてもいる。ビジネス書を乱読したり起業したり経営者を夢見たりするような人も多い。当然福祉に貢献する側と見られやすい。いわゆるマッチョ系の巣窟である。

タイプ04:「労働したくない」から、労働しない「非労働者」

これができる人は限られている。ひとつは途方もない財産家の子に生まれるなど自他のリソースが充実していて、一生働かずして生きていけるタイプ。もうひとつは、リソースがなくなったら死ねばいいやと達観しているタイプ。前者が福祉の対象として議論されることはまずない。少し問題なのは後者で、本人にすれば福祉を受けたいという意欲すらない可能性が高いけれど、何をおいても生存権を守らなければならないという論者や、誰だって本心では死にたいはずがないという信念を持った論者にとってはぜひとも救うべき対象となる。タイプ01と客観的に区別するのは難しい。

タイプ05:「労働したくない」が、せざるを得ない「ホームレス的な労働者」

働きたくなくて本当に遊んでばかりいたら、当然のように食い詰めてホームレスになってしまったというような能天気なタイプ。ただ口を糊するためだけに働く。労働を最大限回避してきた実績が割りの好い労働から自らを遠ざけ、結果として異常に割りの悪い「空き缶拾い」みたいな労働に従事する羽目になる。どう考えてもコンビニでバイトでもする方が楽なのだけれど、すでにその程度の社会性すら失くしていたりする。自己責任論の恰好の標的であり、福祉の対象としてはかなり厳しい目で見られやすい。現状や将来に不安を覚えてタイプ02に転向するケースもあるだろう。

タイプ06:「労働したくない」が、せざるを得ない「労働者」

結構、この層は多数派かもしれない。「働かずに食えたらいいのに」というような台詞は結構見かける。みんな労働に代わる生き甲斐をちゃんと持っているか、或いは、見付けられる自信があるんだろう。ただ、そうした夢のある話をする人は案外少ない。端から諦めているのかもしれない。福祉に関しては「貢献させられている」側だという認識の人が少なくないようだ。そのためか、福祉に頼ろうとする「非労働者」に厳しい意見を吐くケースが多い。日々の労働が不本意なこともあってネガティブな思考に陥りやすく、自己防衛能力が高い。いわゆるウィンプ系の巣窟である。

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本当に適当に分類してみたけれど、特に「労働したい」タイプの内実は微妙だ。おそらく「(食い扶持を確保するために)労働したい(が、労働せず十分に暮らしていけるならできれば労働なんてしたくない)」という、極めて消極的なカッコ付きの労働意欲であるケースを多分に含んでいるだろうからだ。また、それぞれのタイプ間の流動性にも留意すべきだろう。それでもまあ、「タイプ05を叩くタイプ06をタイプ03が諫めてるんだな」とか、「タイプ04を擁護するタイプ06をタイプ06内部から攻撃してるんだな」とかいうような現状分析には、ある程度有効な分類だと思う。

ちなみに、各タイプの説明はネットを眺めていて感じた極めて個人的な印象にすぎない。

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