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- 『あまちゃん』と、暴力と、浄化された世界
- 公共の場で泣き叫ぶ乳幼児もキレる大人も人にあらず
- 誰かを見殺しにする社会、誰かのために自滅を厭わない社会
- そして、人は社会のために子供を産む
- BLを擁護するために変態や猥褻を貶めるのは本末転倒である
- 究極の平等とはどんなものか?
- 「当たり前」の権利と「当たり前」の保障の間に横たわる溝
- ホームレスだとか労働だとかの議論の対象を適当に整理する
- 一個人の価値観が公共の利益を決める歪な社会
- 有意義な批判と無意味な批判の境界
- 「○○にハマる人は寂しい」というお手軽便利な分析のススメ
- ホームレスの排除と差別は隣接するが同一ではない
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- 中3生の受験に敦賀市は何を期待しているのか?
- 電波で儲けた金の行き先
- 日本と自転車と違法駐輪
- 「結婚したくないが子供は欲しい」の本意
- 大抵の男は天寿をまっとうできない
- 公共マナーと寛容のバランス
- 不二家騒動と日本人の美学
図書館とホームレス問題の論点
ずいぶんと話が錯綜しているように見えるので、強引に整理して私見を述べる。
・図書館にも女性専用席 ホームレス対策…「不公平」の声も(産経新聞) - Yahoo!ニュース
・図書館がホームレス排除に苦心しているとかいう件についての私からの提案 - planet カラダン
・ホームレスに人権があるだなんてただの屁理屈だよ - よそ行きの妄想
・図書館問題に乗じてホームレス差別を正当化するキチ○イ - NC-15
論点1:ホームレスに公共の図書館を利用する権利はあるか?
公共である以上は、ある。問題は「図書館を利用する」というとき、その利用目的を問うべきか否か、である。図書館というのは基本的には「図書の閲覧、貸出に最適化された公共施設」だというのが一般的な認識だと思う。とはいえ、多くの図書館は冷暖房完備でイスやテーブルがあり、ウォータークーラーや自動販売機が設置されていたりもする。つまり「快適な空間」を同時に提供してもいる。そして、この快適な空間こそが目的で図書館にやってくるという人はたぶん珍しくない。そういう人を明確に選別し、排除することはたぶん難しい。つまり、利用目的による排除は現実的ではない。
論点2:公共施設の利用規定はどうあるべきか?
これは公共の施設一般に敷衍できる話である。体育館にしろ公民館にしろ、それぞれの施設はそれぞれの目的に最適化した作りになっている。けれども、その事実のみを以て目的外利用を排除する理由とはならない。公共施設であれば、その利用規定についても公共の意見を以て定めるべきだろう。一般には「公共の利益」がその判断基準となる。もちろん、公共の利益の中にはホームレスの利益も含まれる。ただし、すべての利用者の利益を最大化することが現実的に不可能である以上、「落とし所」を探ることになる。余談だけれど、ホームレスは市役所や体育館には寝に行かないんだろうか。
論点3:利害が対立するとき優先されるべき利益は?
誰にも公共のサービスを受ける権利がある。権利が侵害されるとき、原因を取り除こうとするのは自然である。図書館のリソースは限られているから、利用者が一定数を超えると普通早い者勝ちになる。快適な昼寝場所として図書館を利用しているAグループと図書閲覧場所として図書館を利用しているBグループがある。Aグループ同士、或いは、Bグループ同士でリソースを食い合う場合、個々の利害は対立するけれど、おそらく排除の議論は起こらない。ところが、Aグループ対Bグループだと権利闘争が起こりやすい。どちらの権利が保護されるべきかは、所属社会が議論して決めるしかない。
論点4:排除の議論と差別の議論のすり替え
所属社会が図書館の利用について、差別的な視点を極力排した形で排除すべき迷惑行為を規定したとする。たとえば「不当なスペースの占拠、故意の騒音など図書館利用の明らかな妨害行為、その他違法行為など」を排除対象と規定する。これは結果として図書館の利用目的をある程度制限する。ただ、排除対象はホームレスに限定されない。ルールを恣意的に運用しホームレスのみ排除するなどは論外である。図書館利用の実態をホームレス差別の根拠とするのはできの悪い議論のすり替えである。ただ、こうしたルールの策定自体をホームレス差別であるとするのもまた議論のすり替えだろう。
まとめ:図書館と人権?
公共施設は誰にも利用権があるけれど、利用者同士の利害が対立することもある。残念ながら、すべての人間のすべての利益を守ることはできない。そのとき守られるべき「公共の利益」については、公の合意を以て定めるよりない。ただし、その定めによってある特定の属性の人間が不当に不利益を被るようなことがないよう、十分に慎重を期すべきである。まあ、この辺りをガイドラインにしてしまうと、実質的にホームレスが図書館で安眠を貪ることは難しくなるかもしれない。ただ、ホームレス対策と図書館利用は別個の問題だ。それを以て人権問題だなどというのは議論の飛躍だろう。
図書館利用が人権問題とは風が吹けば桶屋が儲かる式の牽強付会ではないかと思う。
【関連して読んだページ(追記)】
・差別問題としてのホームレス問題 - planet カラダン
#まだ議論の無理な習合があるように思う。真っ当な意見が説得力を失うのはもったいない。
posted in 08.09.01 Mon
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comment - コメント
■図書館にも女性専用席 ホームレス対策・・・・「不公平」の声も-男性も不快だ!!
こんにちは。この問題一筋縄では行かないと思います。ただし、図書館のような公の場に本を借りる、本を読むなどの目的以外で来る人に関しては、排除すべきです。場合によっては警備員などによって強制退去もあってしかるべきです。これは、アメリカやヨーロッパでは当たり前のことです。日本では、こうしたことにあまりにも寛容過ぎると思います。ただし、これだけでは問題の本質を解決したことにはなりません。私ホームレスなどの問題に関しては、NPOにどんどん仕事をやらせる環境を築くべきだと思います。事実アメリカには、民間企業がサブ・プライム問題で大失敗しているのを尻目に、長年にわたって低所得者向けの住宅を提供し続けて大成功しているNPOが数多くあります。ここでは、これ以上詳しくコメントすることはできないです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
posted in 08.09.08, by yutakarlson
> yutakarlsonさん
実のところ、現実的な対策については現状すらまともに知らない身としては有効な見解など持ち得ません。新しい受け皿が巧く機能するまでの間どうすべきかなども含め様々な意見があるでしょうし、必ずしも欧米のやり方が参考になるとも限らないとは思います。そもそも、ホームレス問題が本当に解決しているのなら、それはすでに問題ではないはずで、頑張って対策している段階でまだまだ問題は山積していると考えても間違いではないと思いますし。同様に、NPOについてもほとんど内情を知りません。また、そちらのブログも読ませて頂きたいと思います。
posted in 08.09.08, by lylyco