日本と自転車と違法駐輪

日本人はもう、自転車を諦めた方がいいんじゃないだろうか。

「一枚の、写真。」と題されたエントリーを読んでいて思った。もう、日本に自転車は無理なんじゃないか。それを許容するだけの国土的余裕も文化的余裕もこの国にはない。別に違法駐輪者を擁護するつもりはない。ルールや法が絶対だとは思わないけれど、モラルのない人間がいることも知っている。利用者のモラルが問われる一方で、普通の利用者までがほとんど犯罪者のような目で見られる。その点で、自転車は煙草に近い。あれも禁止こそされないものの、もう吸うなといわんばかりの虐待ぶりである。

とにかく、日本は狭い。昔は駅の近くや商店の近くには大抵無料の駐輪場があった。お客様用とあっても、まあ、それほどうるさいことはいわれず、無関係な自転車も結構あったと思う。それが、最近はコインパーキングのような駐輪場が増えた。商業施設保有の駐輪場ですら、多くは時間で金を取る。ぼくの行動範囲内でいえば、普通1日200円程度のものだから、そう高いというわけでもないんだろう。たまにしか利用しないなら気にはならない。が、毎日となったら、これは結構な出費である。平日だけでも月4,000円はくだらない。

どこかが駐輪施設の整備、有料化を始めると、近隣の駐輪場も先例に倣い始める。当たり前だ。無料のままにしていると、有料化のあおりを食って無関係な人間の駐輪が増える。こうして急速に、人の集まる場所から無料の駐輪場が姿を消す。すると増えるのが路上駐輪である。日々の小銭は極力払いたくない。それが小市民の本音である。これまで払ってこなかったコストとなると尚更だ。こうなるともういけない。誰かが違法駐輪を始めたが最後、その場所は自転車の無法地帯と化す。間違いなく整備される前より酷い状態になる。

数が増えると節操をなくすのが人間である。ここはもう一杯だから今日は有料で我慢しよう、なんて人はそうはいない。場所がなくても無理やりとめる。人の迷惑を考えるとか、そういう感覚は既にない。すぐに、ちょっと歩行の邪魔だとかそういうレベルではなくなる。障害者やお年寄りが怪我をするとか、救急や消防の妨げになるとか、人命にかかわることもないとはいえない。もう見て見ぬふりはできない。地域をあげて違法駐輪の撤去活動が活発化する。手を打つなら早い方がいい。こうして路上から自転車は放逐される。

とにかくもう、ただで余人の自転車をとめてやるような余裕は、この日本にはないのである。のみならず、日本には自転車が堂々と走れる道路すら、実はない。道路はまず自動車が走るように作られている。自転車も車両だからと車道の真ん中を走ることはできない。そして、歩道がない道はあっても、車道のない道などは皆無だ。市街地や繁華街に自転車道など望むべくもない。稀に歩行者天国はあっても自転車天国など聞いたこともない。車道の端を走ろうにも原付との共存はなかなかに辛い。狭い車道など最悪である。

歩道には大抵「自転車通行可」の標識が立っている。自転車は歩道を走れということだろう。そう思って我が物顔で歩道を走っていると、これは歩行者に嫌われる。何しろそこは歩道である。当然、法的にも歩行者が優先で、ベルを鳴らして避けさせるなど言語道断である。自発的に避けてもらえない限り、自転車は降りて進むしかない。自転車といえども思い切り走っているところをぶつかれば怪我もしよう。相手が子供や年寄りなら尚更危険だ。歩くより早いのが大きな利点だというのに、歩道では普通にスピードも出せない。

周囲に遠慮しいしいスピードを出しすぎないよう気をつけながらトロトロと運転し、目的地に着いたら着いたでバスや電車に乗るのと変わらないくらいの駐輪代金を取られる。これが正しい自転車利用者の姿である。朝ギリギリに家を出てチャリンコを思い切りかっ飛ばし、2輪ドリフトで駅前に放り出したらそのままの勢いで息を切らして電車に飛び乗る。そんなヤンチャなことをしようものなら、周囲からの白眼視は必定、帰る頃には自転車もなくなっている。自転車というのはこれほどまでに肩身の狭い乗り物なのである。

そこまで虐げるならいっそ自転車などなくしてしまった方がいい。

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りりこさん、こんばんは。
レスは書き尽くしてますし、ご覧頂いてると思うので、少し記事から外れるコメントになります。
実はあのエントリー以前に、投稿を迷っていた同様の趣旨の写真を撮ってました、中津済生会病院の裏手から梅田に抜ける道の線路側に、JRの建物が有りまして、下り坂から梅田方面に曲がってくる通行量が多く、歩道は無くけっこう危険で、建物の敷地内を通るのですが、駐車場の端の車がいつも花壇ギリギリに斜めに向け停めて有り、自転車やベビーカーなどは通れなくしてます、人間も通って欲しくないような意思表示かもしれません、実際にどんな経緯や意図があるのか分かりませんが、交通状況は承知していると思われるだけに気分の良いモノではありません。
想像になりますが、馬券売り場や梅田駅が近くJR側の道は幅員も有り、自転車を放置するには絶好のポイントなのに、1台も無いコトを考えれば、普段から厳しく取り締まられてるのかも知れません、阪急の高架を越えて中津側と対照的なのが、当事者として疑問でありました。

MASAさん、いらっしゃいませ。
本当はそちらのエントリーを読んでコメントを書き込もうとしていたのですが、あまりに長くなったのでこちらでエントリーしてTBさせていただきました。
違法駐輪については、撤去を徹底するより解決策はないでしょうね。ぼくの利用駅周辺は整備された途端に取締りが異様に厳しくなり、整備直後など常にシルバー人材と思われるガードマンが周辺を巡回していて、駐輪するなり声をかけられるような状態でした。今はそれほど見張りは徹底してはいませんが、朝から放置していればほぼ間違いなくその日の内に撤去されます。ですから、駅周辺に放置自転車の姿はまったく見られません。バス、マイカーでの送り迎え、他に手がない人は有料駐輪場といった振り替え手段がある程度習慣化されれば、取り締まり自体は当初ほど厳しくなくても大丈夫なようです。
ぼく自身、完全にバスユーザーになっています。もう、自転車はほとんどといっていいほど乗りません。嫌いじゃないないんですけどね、あの速度といい、適度な運動量といい。違法駐輪を厳しく取り締まれば、確実に自転車ユーザーは減ります。それが喜ばしいことなのか残念なことなのかは知りませんが、世の中便利になるばかりじゃないなとは思いますね。そして、どんどん金がかかる世の中になっていることだけは間違いないようです。

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