「結婚したくないが子供は欲しい」の本意

我が子とて所詮は他者である。

切込隊長BLOGにあがっていた‘結婚したくないが子供は欲しいとか言う女の気持ちはよく分からん’というエントリーを見てふと思った。もちろん、そんなことをいう各個人の気持ちなどは分かりようもない。けれども、彼女らの最大公約数的な気持ちなら分からなくもない。要するに男とは末永く楽しくやっていける気がしないのだろう。

この手の発言をする女性というのはそこいらじゅうにいる。会社に女子社員が何人かいれば、一度や二度は耳にしたことがあるだろうというくらいにポピュラーな話題である。それだけ、世の女性たちは結婚にメリットを見出せなくなっているのだろう。そして、蜜月というものがそう長く続かないことを、諦めとともに実感してもいるはずである。

そもそも赤の他人とガップリ四つに組んで付き合うというのは色々と面倒なものである。それでも一緒にやっていこうと思えなければ、結婚など土台無理である。生活をともにするよりも、面倒ごとや摩擦の方が気になるようではどうしようもない。彼女たちは、過去の男性経験から、未来に希望を見出せなくなっているということなんだろう。

それは世にロクな男がいないということかもしれないし、彼女たち自身がロクな人間じゃないということかもしれない。ただ、女性が「男なんて要らない」なんてのたまうときは、大抵、男なんてロクなものじゃないと思っているに違いない。恋愛に夢も希望も持っていて、新しい彼氏と進行形でラブラブな女性は、きっとそんなことはいわない。

すでにできあがった人間同士、長く付き合っていくには、どうしたって努力やら忍耐やらが必要だ。そして、それでも一緒にいたいと思える魅力や、自分なりの意味が見出せなければ、そんな関係に未来なんてない。つまり、そんな相手を見出すための力と運と、そんな関係を続けるための素養がともに必要なのである。

一般に、人付き合いに向かない人というのはいる。たとえば、自分のペースが崩されるのを極度に嫌う人や、他人のちょっとした欠点が許せないというような人である。価値観の違いを容認できないというのも、人付き合いをする上ではかなりの障壁になるだろう。そういう人が、伴侶を持たないという選択をする。別に間違ってはいないと思う。

何しろ、男女を問わず、その気になれば独りで十分に生きていける時代である。

問題はそんなタイプの人間が「子供は欲しい」などといってしまう点にある。こういう女性は、きっと子供は好きなんだろう。けれども、子供は成長する。それも、一個の人格を持って成長するのである。母親が世界のすべてともいえる乳幼児期の子供は可愛いかもしれない。きっと、あれこれと手を焼くのも幸せと思えるだろう。

それは母子関係の蜜月である。ただ、思い出して欲しい。過去の男女関係において、蜜月がいかに儚いものであるかは、十分に経験済みのはずではなかったか。ならばそれが長く続かないことは分かっているはずである。あるいは、母子関係においては、それは永遠だとでもいうのだろうか。ならば、自分と親との関係をよく振り返ってみるべきである。

結局のところ、彼女たちがいいたいのは「子供が欲しい」ということではなく、「子供を産むにはそろそろいい歳なんだけど、なんだかロクな男がいないんだよね」ということなんじゃなかろうか。どうも本気で私生児を産みたいと思っているわけではないように思える。少なくともぼくは、そういってシングルマザーになった人を知らない。

切実に父親は要らないから子供だけ欲しいというのなら、実現するのはとても簡単だ。何の責任も負わずに中出しできるとなれば、協力したい男はいくらでもいるだろう。出会い系でもなんでも使って妊娠するまでその場限りのセックスに励めばいい。案外、所期の目的を外れて新しい世界が拓けるかも知れない。それならそれで好きにすれば良い。

要するに、「結婚したくないが子供は欲しい」というのは、「結婚したいと思えるようないい男が見付からない内に、子供を産んでおかないと辛い歳になってしまった」という、ある種の愚痴なのではないか。ならば、30を越えても独身という女性が珍しくない昨今、そういう声があちこちで聞かれるのも、特段、不思議なことではない。

男女関係も親子関係も煎じ詰めれば人間関係である。男とはうまくいかなくても、我が子とならうまくいく、などと考えるのはあまりにも楽天的である。むしろ、ひとりの男とも巧く添い遂げられないようなら、子供とだって巧く付き合ってなどいけないと考えるべきだろう。男を捨てるのは構わないけれど、子供を捨てるのは非道である。

いずれ、本気でシングルマザーを志すときは立ち止まって良く考えた方がいい。

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comment - コメント

記事面白かったです。
彼女と夫の関係だけでなく、親との関係・子との関係まで考えている点 非常に共感しました。

Nsanさん、いらっしゃいませ。
いつの頃からか、やたらと人間関係、或いは、コミュニケーションが重視されるようになりました。求人情報などを見ても、「コミュニケーションスキルのある方」みたいなことが平気で書かれています。どうにもコミュニケーション下手が損をし、不当に貶められている気すらします。この記事の根底には、こうしたコミュニケーション至上主義に対する、ぼく個人の不信が知らず反映されているかもしれません。そんな偏っているであろう視点の中にも共感してもらえるところがあったのは嬉しいですね。

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