電波で儲けた金の行き先

電波利用料なんていうから、ややこしいことになるんじゃないか。

衆議院議員 河野太郎発行メルマガ「ごまめの歯ぎしり」ブログ版の「本邦初公開?」というエントリーで、主要テレビ局の電波利用料が公開されている。国庫を増やすのが議員の仕事なのかどうかは知らないけれど、とにかく、営業利益に比して電波利用料が安すぎるという主張であるらしい。これは正直、違うだろうと思ってしまう。実際問題として電波の流通を保守するのにいくらかかっているのかは知らない。ただ、この費用さえ賄えれば電波利用料の役は果たしていると考えるのが妥当だ。この場合、営業利益の多寡は関係ない。

テレビ局は電波を使って儲けている。それも巨額といっていい。だからといって、電波利用料を値上げして保守費用を大きく上回るを額を徴収するのが正しいのか。そのお金をどうするつもりなのか。仕事の内容も変わらないのに保守に関わる人たちの給料を大幅に引き上げるのか。電波利用料といいながら、別の用途に転用するのか。古き良き箱物信仰で電波研究施設でも作りまくるのか。河野氏に賛同している人たちはどう考えているのか。単に、電波利権でボロ儲けしているテレビ局を叩きたいだけなのか。門外漢のぼくには謎である。

この話題、404 Blog Not Foundでも「News - 電波利用料の耐えられない格差」というエントリーで中継されている。小飼氏の主張がハッキリと書かれているわけではないので、結局のところ電波利用料についてどう考えているのかは分からない。ただ、基調としてはテレビ局ボッタクリなんじゃね?…という流れに見える。これなら、ぼくとしてもよく分かる話になる。つまり、電波利用料が安いのではなくテレビ局の利益の上げ方が些か不当なんじゃないか、と。ありもしない電波の値段をあげるんじゃなくて、無茶な値付けを是正しろ、と。

電波というのはなかなかに稀少な資源だ。それは使える周波数帯域に限りがあるかららしい。でもって電波はとても公共性の高いものだから、これの配分は政府がやっている。誰もが簡単に電波を利用できるわけではない。今のところ、テレビはまだまだ有力なメディアである。ならば、独占することで特権的に得られる利益が当然生まれる。テレビ局の「電波利益率」は1000倍 - 池田信夫 blogに書かれているようなことが起こるのも、この力関係を考えれば当然だろう。そして、それだけ出しても広告を出す価値があるというのだから始末に負えない。

その意味では、このボッタクリ状態は市場原理に叶っているとも考えられる。すると、一概にテレビ局が悪いともいえなくなる。モノが稀少でニーズがあれば価格は高騰するものだ。厭ないい方をすれば、足元を見るのも商売というヤツの一面だろう。見ていて気持ちの好いものではないけれど、真っ当といえば真っ当な金儲けをしているにすぎない。公共性の高い電波が寡占状態にある。そしてその恩恵によって、莫大な利益を上げている。考慮すべきはこの点だけだ。ならば、これを社会に還元する最も安直な方法は税という気がする。

結局のところ、テレビ放送税とでもなんとでも名前を付けて、テレビ局から余計に税金を巻き上げる。これが一番手っ取り早い。アレ、それだったら電波利用料の値上げでもいいじゃん。その通り。それで、冒頭の一文に戻る。電波利用料なんて名前がイケナイ。これだとコストを背景にした料金設定でなければならない。だから、税にして電波な売り上げから天引きする。とても分かりやすい。まあ実際には、総務省とテレビ局とはある種の共犯関係にあって、きっとそこには美味しい美味しい利権構造が温存されていたりするんだろうけれど。

いずれ、市場原理の中の適正価格というのは一筋縄でいかない。

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