モテより優先順位の高いものとは何か?

女よりも3度のメシよりもゲームが好き…本人がそれでいいなら何ら問題はない。

モテるための努力 - sakamuke07のメモ
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リンク先の友人氏の言動が思慮浅薄なことは疑いようもない。一片の道理はあるかもしれないけれど、それは偶然マトモなこともいったかも、という程度のものだ。だから、あえて彼のおかしさを論うことに意味はないと思う。気になるのは非モテ側の理論と、それに対してはてブにつけられた肯定的なコメントだ。具体的には「彼女を作るための努力の優先順位が低い」という言葉に共感する価値観である。これって実はちょっと面倒な問題ではないか。野暮を承知で書く。件の非モテ氏にとって、彼女を作る努力よりも優先順位の高いものとはいったい何なんだろう。

努力というのは究極的には自分の幸せのためにするべきものだろう。何に幸せを感じるかは、当然人による。特別な異性のパートナーがいることは、よくある幸せの一例ではあるけれど、もちろんすべてではない。引用元のブログ主は大学生だという。働きながら学生をしているのでなければ、その本分は勉強だろう。これは社会人なら毎日仕事があるというのと同じで、人生における優先順位が一位であることを意味しない。友人、彼女、彼氏らとドラマみたいな恋愛や青春の日々を送るより、好きな研究に没頭している方が幸せだという人は、もちろんそうすればいい。

行動に優先順位を決めるということは、幸せな人生というあやふやな状況をうまくバランスするための行動規範を持つことだ。けれども、何かを完全に切り捨てる、なんてことができる人は少ないと思う。衣食住に足りること、そのために働くこと、良き友人を持つこと、生涯のパートナーだと思える相手を持つこと…。糊口を凌ぐより彼女を作ることが優先する。そんな人はあまりいないと思う。けれども、衣食住さえ足りていればいいという人もたぶん少ない。じゃあ、自分は本当は何を欲しているのか。優先順位が高いと思っていることは本当に欲しいものなのか。

彼氏彼女とかクダラネー、金持ちクダラネー、スイーツ(笑)クダラネー…否定するのは簡単だ。けれども、少し考えれば本当にクダラナクないものを見付ける難しさが分かる。「彼女を作るための努力の優先順位が低い」という人は、それよりも上位に何をおいているのか。彼女を作る努力のプライオリティを下げて、いったい何の努力をしているのか。それは本当に「彼女を作るための努力」を捨てなきゃできないことなのか。或いは、捨てて後悔しないほどに自分の幸せに貢献するものなのか。独りで幸せになるというのは、実は難しいことだとぼくは思っている。

独りで幸せになれる人は、たぶんネットにコミュニケーションを求めたりはしない。はてなで日記を書いたりもしない。これらは、いわゆる承認欲求に基づく行動だと思うからだ。ぼく自身、ブログを書くのは自分の考えに共感されたり意見されたりすることをネットの向こうに求めるからだ。そういう思いがなければ公開する意味はない。ノートにでも書くか、妄想だけしていればいい。それで満足できないということはつまり、他者を求めていることの証左ではないか。もちろん他者に何を求めるかはそれぞれかもしれない。けれども、優先順位は低くないはずだ。

もちろん、生涯独りという生き方を否定するつもりはない。ただ、それで幸せに生きられる感性の持ち主はそう多くないだろうと思っているだけだ。生涯の伴侶とかマジイラネという人は、他に幸せの根拠を持っているということだ。そういう人は強い。ぼくは自分の弱さを自覚している。他者の肯定によって自己肯定を強化する。そんな弱さを抱えたまま大人になってしまった。だから、他者を求める部分を捨てきれない。そして、自分がそういう他者の弱さを補えるならそうしたいという気持ちもある。ただし、そんなことができる相手は限られているだろうとも思う。

別にモテる必要はない。ただ、優先順位についてはよく考えてみるべきじゃないだろうか。

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comment - コメント

私のちかごろ思うところも非常に近いので、勝手ながら、自分のほうへ引き寄せつつパラフレーズしてみますと…

プリンシプルを見失った不安がひとをして取らせる行動は、敢えて傍目にもみすぼらしい、本当は自分にとってさえどうでもいいはずのものに固執して見せるか、他人の提示する価値はどれもこれも全て腐し、相対化し、消極的に拒否するか。
また、その醜態をゴチャゴチャ自己分析してみせ時には自嘲し、自閉的な思索あるいはおしゃべりに逃げ込むか。
逃避行動のバリエーションは表面的にはさまざまでも、本質的に貧しい。

そういうところに陥ったまま、なし崩しに朽ち果てたくなかったら、まず自分の現状を直視し、個別の要素にプライオリティを設定すること。そこから具体的な行動規範を紡ぎ出すこと。…

>そして、自分がそういう他者の弱さを補えるならそうしたいという気持ちもある。
というところだけ文意がわからないのですが、いわゆる「共依存」的な関係でも、それはそれでよしとしたい気持ち、ということでしょうか?

すみません、補える の字が 捕える に見えていただけでした。
それは意味がわからないわ。

> nbさん
ネット上に散見される自称非モテの自己肯定の多くが、炬燵に入って手の届く範囲だけで生きていくことを、幸せだと必至に思い込もうとしている…そんなふうに見えます。で、炬燵から出ない尤もらしい理由を一生懸命考えている。確かに、炬燵から出るのは少し寒いかもしれない。けれども、炬燵の外にはもっと色んな楽しい世界があるんじゃないかな、と、つい余計かもしれないことをいいたくなるんですよね。まあ、ごくたまにコイツは本物か!というようなあっぱれな自己肯定を目にすることもありますが、そういう人はまずリア充を腐したり非モテを嘆いたりはしませんね。

まあ私にとっては「非モテ」なんてのは一番同情の薄い手合いであり…(決して自分は「モテ」だということではないけど)
プリンシプルの喪失による不安と混乱、その宙ぶらりんの状況と正対することから逃避するための、自閉的な価値基準の捏造、また非生産的な言説…という構造は、「非モテ」においてほとんど戯画的なまでにわかりやすく見て取れるけど、決して彼らだけのものではない。
最終的にはとことん自分の問題だと思っています。

> nbさん
ぼくの場合、同情するわけではないけれど、過去の自分を思うと共感できる部分もなくはない、といったところですね。それから、最近特にはてな界隈で目にする「非モテ」は、すでに異性に興味を持たれないというような意味を超えて、仰るような構造にグジグジと悩んじゃうような人全般を指す言葉として使われている節がありますね。いずれにしても、最終的に自分の問題だというのは、まったくその通りなわけですけれども。

>独りで幸せになるというのは、実は難しいことだとぼくは思っている。
>独りで幸せになれる人は、たぶんネットにコミュニケーションを求めたりはしない。はてなで日記を書いたりもしない。
彼氏彼女がいない人は独りなんですか? ネットで交流した人は恋人候補ですか? 人間関係って色々あると思います。恋愛による人間関係が全ての上位にあるという価値観は別に普遍的なものでは。まるで恋人や配偶者がいない人間は無人島で一人で生きているかのような言い方はちょっと疑問です。
秋葉原で事件を起こした人も「彼女がいないから」「彼女さえいれば」と自分の不幸を全て恋人がいないことに結びつけて考えていました。モテるための努力を否定はしませんが、モテないことを過剰に重視するのは精神衛生上よくないと思いますし、そういう人間がモテるとも思えません。彼は「恋人がいないこと」だけで頭が一杯で、現在の周囲の人間や環境に対する感謝もなく、生活を楽しむ努力もあまりしなかったのではないかと妄想します。非モテに拘らず、現在を楽しんだ方が気力がわき、恋人も見つかりやすいのではないかと。
そういう意味で「~歳で恋人がいないのは異常」とか「~しないと幸福になれない」とかプレッシャーをかけたり、自分で思い込むのはやめた方がいいと思います。手に入らない限り一生不幸になってしまいますから。

> Anonymousさん
これはぼくの文章の書き方が悪かったかもしれませんね。彼女がいない、という状態はいわゆる「非モテ」の些細な一面にすぎないというのがぼくの現在での理解です。特にはてな界隈なんかで頻出する「非モテ」という用語は、他者と有意義な人間関係を築けない状況全般を指していることが多いかと思います。その表層的な結果のひとつが「彼女がいない」や「結婚できない」であって、深刻なのはそれ以前の人間関係の構築を諦めたり冷笑的に見たり希求する自分の気持ちを誤魔化したりする態度なのではないか、と。そういう意味で、このエントリーでいいたかった「独り」はただ恋人や配偶者がいないという狭義での独りのつもりではありませんでした。仰るとおり、恋人や配偶者のいない人生を全面的に否定するような世の中は多くの人を生きにくくすると思います。そうした風潮に加担するつもりはありません。むしろ、もっと多様な価値観を持って生きる幸福を肯定したいと思っています。このエントリーの主張は、だから、無理やり要約すると「自分が本当に求めているものが何かよく考えて優先順位をつけよう」ということで、「恋人(配偶者)をつくるのが一番」というものではありません。

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