ボクノタメニ泣イテクレOut of the mouth comes evil.

これは要するに抽象と具体の差なんだろうと思う。

・高学歴でも低収入だと結婚率が低いとの調査結果出る - Ameba News [アメーバニュース]
・女性の結婚の条件

考える対象が目の前にあるのとないのとでは、考慮の幅に差が出て当然だろう。相手のいないまっさらな状態で「どんな人と結婚したいか」を考えることと、具体的に結婚を考えられる相手がいて「この人と結婚したいか」と考えることの間には、きっと海よりも深い溝がある。アンケートやなんかでよく見かける「女性が望む結婚の条件」的なものは、およそ前者に属することが多いのだろうし、ふたつめのリンク先にある匿名氏のような「体験談」は完全に後者の類だろう。高学歴高収入がいいと答えた女性も、相性や話し方や顔や匂いや性癖を考慮しないといっているわけでは、たぶんない。

引越しの予定もない人に「マンションに住むなら駅から徒歩何分以内？」なんて訊き方をすれば、普通は「10分以上とかあり得ないっしょ」となる。ところが、実際に今マンションを探している人ならその他の具体的な諸条件で頭が一杯だから、「他の条件によるかな」となる。家賃はいくらか、どんな間取りか、築何年か、オール電化かガスか、近くにどんな店があるか、大家はどんな人か、駐車場はあるか、ゴミだしの規則はどうかなどなど、具体的な懸案事項が多ければ多いほどひとつの条件にかかる重要度は相対的に下がる。優先順位をどうつけるかだって具体があって初めて考えられる。

確かに、高学歴低収入の男性は未婚率が高いのかもしれない。けれども、それを「女性の結婚の条件」に適わなかったからだと考える根拠はあまりない。当たり前のことだけれど、結婚は女性だけが一方的に決めてどうにかできるものではない。たとえば、自ら結婚を望まない層や端的に女性にモテない層と、高学歴低収入の男性の層が大きく重なっているだけのことかもしれない。いずれ、現在未婚の女性の多くが「分不相応な条件を男性に課すから結婚できない」わけではないだろう。基本的には「好き」とかいう感情も含めて相手がいないから結婚していないだけのことではないかと思う。

そして、もうひとつ大事なことがある。匿名氏は「高学歴高収入」なんかよりもっと難しい条件で相手を選んだのであって「高学歴高収入」が高望みなわけでは決してないということだ。「収入が低くてたとえ自分が苦労してでも一緒になりたい相手」という条件は、相当にハードルが高い。そんな相手に巡り合えた人、或いは、そういう風に思ってもらえる人というのは、恐ろしく幸運な人である。そんな幸運な人が未婚の人を捕まえて「高学歴高収入とかいってるから結婚できないんだ」なんていっても反感を買うだけではないかと思う。それは持たざる者の夢想に水を差す行為でしかない。

まだ幸福な出逢いに恵まれない人が「結婚の条件」を弄ぶ。それほど悪いことだろうか？