2次オタ=性的嗜好を先鋭化する人たち

2次元にしか興味がない、という言葉の裏には何があるのか。

livedoor ニュース - 江東区OL殺害事件 猟奇的犯行は鬼畜エロゲーの影響か
痛いニュース(ノ∀`):【江東区・女性殺害】 「2次元の女にしか興味が持てない」 猟奇的犯行は“鬼畜エロゲー”の影響か…ゲンダイ
2次元にしか興味を持てない人などそうそういないのだから…… - 何かの間違い

江東区OL殺人の容疑者が2次元オタクだったというような内容のニュースが出た。そして、2次オタたちやウォッチャーたちがすかさずツッコミを入れる。2次元にしか興味ないなら3次になんか手は出さんだろう、と。その様子をみて、具体的な対処法を指南したのが3つ目のリンク先で、3次相手に(主に風俗などを利用して)妄想を処理すればいいと思うよ、という話になっている。確かに2次オタとはいえ3次での性的充足を完全放棄していることは稀だと思う。だから、これはいいアドバイス、と思った。思ったけれども、少し難しいかなと思える部分も、実はある。

そもそも、2次元にしか興味がない、を文字通り受け取るのは違うんじゃないかという気がする。2次元の世界には、様々な性的嗜好に対応すべくいまや幅広すぎる商品が用意されている。用意されることで新たな中毒者をだすこともあろう。興味本位で触れてしまい、最初はショックを受けたものの何故か目が離せず、そのまま深みにはまるなんてことは珍しくなさそうだ。ロリも近親相姦もスカトロも調教も変態的だからこそより強い性的興奮を惹起する可能性を秘めている。鬼畜エロゲーもそのひとつだろう。こうしたものは、普通身の回りの現実には存在しない。

性的対象となるキャラクターの造形もそうだ。外見描写はもちろん内面描写をとっても、3次元ではあり得ないフェティッシュな嗜好をこれでもかと突いてくる。それはエロ方面に限った話ではない。ハルヒはエロアニメではないけれど、消費者にとってあのキャラクターたちは立派に性的対象だろう。萌えというのは、そうした多様な嗜好をひと言で表す便利な言葉である。当然のように2次元商品は消費者の反応を見ながら専門性を強め先鋭化してきた。そんな風に先鋭化された性的嗜好を満たすような現実は普通はない。ならば、2次元にしか…とならざるを得ない。

ひとたび嗜好が先鋭化されてしまうともうイケナイ。それに応えられない3次元には魅力を感じられなくなる。リア充なんてあり得ない。これが2次オタの実際なんじゃないか。逆にいえば、先鋭化された嗜好に応え得る3次元なら大歓迎だ、というのが本音じゃないかと思うのである。ハードコアな鬼畜趣味は普通3次元では叶えられない。だから、2次元にしか興味はない、といういい方になる。けれども、ハードコアな鬼畜趣味を3次元で謳歌できるなら、是非してみたい。あの事件はそういうことだったんじゃないか。先鋭化されすぎた嗜好は実現=犯罪になりやすい。

2次元相手に研ぎすぎた刀は、もう風俗相手の妄想程度では満たされないのかもしれない。

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ニ次元にしか興味がないという言葉の裏には何があるのか、について…私はやや違った感触を持っています。「研ぎすぎた刀」=過剰適応による畸形的進化は、「先鋭化」というよりただ「形骸化」でしかない。能動的な意志の介在が認められない。

オタクはエロゲーだの萌えアニメだのを、もはや望んで消費してるんじゃないだろうと思います。オタカルチャーが熱い偏愛に裏打ちされていたのは旧世代の話であり、今やオタ商品は思考の空転・意識の空白を埋めるための「やわらかい詰め物」でしかないのではないか。

オタク向け商品の果てしない細分化・過激化は、決してあらゆるニーズを漏らさず捉えようとしての努力の集積でなく、イノベーション無き生産を続けるための最も安易な差別化の方法でしかない。
欲望を仕分けし記号に置き換える事で、欲望の総体が立ち枯れていく。だからさらに細分化を続けるしかないという自転車操業。

また消費者側について言えば、本当に欲しいモノはもうどこにもない。選択肢の表面的な増加によって、受動的に何かを選ぶだけの行為を、自ずから欲し、満たされたのだと辛うじて錯覚することができる。自分は~~萌えのヒトだと規定していき、消費行動のスタイルを組み立てられるという…止まれない自転車の両輪。他の業界に見られるのと同じように。

表面的に過激なエログロゲームをやってるとき、実は彼らの内面は醒めきっている。だからそれを現実の犯罪に繋がる欲望の燃料と見るような発想を冷笑せずにはおれない。

いわゆるキモオタ童貞な人々は、「モテない」ということを字義通りの意味を超えた社会的な無力感の表現として口にしていると感じます。
まず恋愛の成就とは互いの人格に対する手放しの肯定、承認であろう…というセンチメンタルな、と言うか実感を欠いた思い込みが前提にあり、当然の帰結としてそんなの絶対ムリだ、自分はそうしたリアルの・他者との相互承認の秘儀から決定的に疎外されているのだ、という確信がある。

その自らの思い込みが作り出した、それだけに揺るがせようもない無力感の単純な代替表現が「二次元にしか興味ない」なのではないか。
性欲が満たされる満たされないというのは枝葉のことであり、「二次元」への実践すらそのその諦めの境地を追認し、無感動に塗りつぶす所定の手続きに過ぎない。
そんなふうに思います。

> nbさん
確かに、オタクのありようはnbさんの仰るような「形骸化」に向っているのかもしれません。そして、「性欲が満たされる満たされないというのは枝葉」だと心底実感している人もいるのでしょう。
けれども、やっぱりオタクにも程度や段階というものはあるんじゃないでしょうか。特に若くしてオタク化した場合、そこまで解脱できていない可能性は決して低くないように思うのです。そうしたものへの渇望が本当に形骸化し、諦めの境地に達しているのであれば、そもそも強姦殺人みたいな行為に走る動機がなくなってしまう。秋葉原の事件のように無差別殺傷ならまだしも、明らかに性的な意味合いを持って計画的に異性に近付き、最終的には殺して後始末をするというのは、nbさんの仰る「醒めきっ」た内面が引き起こす行動とはうまく噛み合わないなぁというのが、ぼくの個人的な感想です。
ちなみに、ぼくはゲームやアニメが犯罪を引き起こすなんてことは少しも思っていませんし、そのような主張をしたつもりもありません。そんな風に読めたのでしたら、単にぼくの表現が拙かったということです。ご容赦ください。

lylycoさんの書かれたことの中にゲームやアニメが犯罪の原因に…といった主張はもとより感じていません。お互いの、どのくだりについての釈明?なのかちょっとわかりませんが、そのように誤解していると誤解されたのであれば(?)ともかくそういうことはないです。
ともあれ長々と、しつこくてすみません。

> nbさん
ああ、「だからそれを現実の犯罪に繋がる欲望の燃料と見るような発想を冷笑せずにはおれない。」というのは、ぼくの文章からそういう発想を読み取ったということではなかったんですね。誤解されているのかと誤解してしまいました。実際の話、マスメディアやなんかで、いまだにそういう取り上げられ方をするのを見ると、本当に辟易しますね。
ちなみに多少の長文はお気になさらず。こんな拙い内容をブログで公開しているのは、他の方たちの意見に触れたいという意味合いもありますので、むしろ有難いと思っています。

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