昨日、一人の男が死んだ

はてなのため戦って黙って死んだ。

彼は何の取り柄もない素寒貧なニートだった。けれども、彼は知っていた。熱いインターネットを。戦って死ぬことを、どうして死んだのかとは訊かない。でも、彼の童貞は何処へ埋めてやればいい。君は、はてブのために死ねるか。彼の名は元増田。昔、人は戦で死んだ。国のため戦って黙って死んだ。今、熱い智は何処にもない。泣くことさえ人は忘れた。けれども、生まれた囁きがネガタグやネガコメで幸せを守れるか。明日、男が死んで消えても、ブクマもブコメも要らない。ブラウザを閉じたら忘れて欲しい。君は、はてブのために死ねるか。彼の名は元増田。

許せないヤツがいる。許せないタグがある。だから、ネガタグにまみれても、ネガコメに晒されても、エントリーを書く。増田に書く。彼の名は元増田。…彼の死は犬死だった。はてなは変わらない。彼は決めていた。おれのエントリーに100以上の[死ねばいいのに]がついたとき、おれはその声に従って死ぬのだ。それは民衆という名の神の声なのだ。おれはただ彼らの気晴らしのために死ぬのだ。それだけで十分なのだ。否、気晴らしにさえならないかもしれぬ。それでも構わないのだ。おれの死はおれの最初で最後のネガタグでありネガコメなのだ。それでいいのだ。

そうして、彼は一人で戦って、黙って死んだ。はてなーたちはその死を知らない。彼はただの増田として忘れ去られる。トリガーを引いた100人以上のブックマーカーたちは、今日もネガタグをつけて回る。乾いた笑いを口の端に浮かべ、下目蓋をヒクヒクと痙攣させながら、増田を罵倒し、人格を否定し、ネガコメを量産する。やがてネガコメは人格を獲得する。虚空の肉体を獲得する。白桃色の透き通る肌。流れるような浅葱色の髪。それは14歳の少女の姿をしていた。彼女は、はてなの時空を駆ける。ネガタグが消える。ネガコメが消える。彼女が喰らう。喰らい尽くす。

少女は美しかった。ネガタグが生んだ少女。ネガコメが造った少女。それはニートだった彼の理想の姿をしていた。昨日死んだ彼が望んだ少女だった。少女は喰らい続けた。喰らうほどに美しさを増した。ブックマーカーたちは視た。自らのはてブ一覧の中に。少女を。少女はネガタグを付ければ付けるほど、ネガコメを書けば書くほど彼らの理想に近付いていった。ブックマーカーたちは憑かれたようにネガタグを付け続けた。寝食を忘れてネガコメを書き続けた。少女は神になった。ブックマーカーたちは神に捧げるため、ネガタグを、ネガコメを生む機械となった。

昨日、一人の男が死んだ。


【インスパイアされたページ】
[これはひどい]は使わない
お言葉を返すようですが
「死ねばいいのに」タグについて思うこと
y_arimさんについて思うこと
頂いたはてブコメントを見て。
※そして、これらのはてなブックマークのページたち。

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