本当に「売女」は蔑まれているのか?

何の根拠もない私的な実感の話をする。

「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 - 分裂勘違い君劇場
404 Blog Not Found:仮説 - 「売女」や「土方」が蔑まされる理由

ぼくたちは性産業従事者が蔑まれてきた歴史を何となく知っている。そして「売女(ばいた)」という言葉が女性を罵倒する言葉であることも知っている。つまり、どこかの時点で罵倒語として「売女(ばいた)」という言葉を学んだのである。さて、「売女」という罵倒語を罵倒語と知って罵倒目的で使うとき、罵倒されているのは誰か?もちろん「売女」と罵倒された相手である。このとき、その罵倒語を使った側に売春婦一般を蔑む意図はあるだろうか。ぼくはあるとは限らないと思う。売春婦を蔑む感性を持たずとも一般的な罵倒語として「売女」を使うことは可能だからだ。

つまり、売春婦一般が蔑まれているかどうかに関わらず、「売女」が罵倒語であるという共通理解さえあれば、それは罵倒語として成立するのである。「ビッチ」やら「チ○ポ野郎」やらいうのも同じだ。たとえ個人的にビッチ属性を持ったセクシー美女が大好きでも、罵倒語として「ビッチ」を使うことは可能だし、相手によっては十分に有効だろう。もちろん、「お前が意図せずともそういう無思慮が結果として売春婦を貶めているのだ」という批判は可能だ。けれども、今の論点はそこにない。あくまでも、「本当に売春婦は蔑まれているのか?」というのが関心の核である。

上に挙げたリンク先の筆者たちは、自分たちが「売女」を蔑む心性を持っているかどうかを明かしてはいない。ただ、内容を読む限り、自分たちはそうした差別心を持たないという立場で語っている。少なくとも、ぼくにはそう読める。であれば、何故、それが一般的な感覚だと考えないのだろう。ぼくだって特に性産業が下賤の職業だという認識はないし、土木や農業や漁業についても同じだ。けれども、ITのイメージにそぐわない力仕事的な印象を持たせるために「IT土方」なんて言葉を使うことはあるし、それを嫌がりそうな相手になら罵倒語として使うこともできるだろう。

もちろん、職に貴賎ありと感じる人は今でもいるだろうと思う。ただ、ネット上に散見されるような(性的な意味での揶揄表現を含む)罵詈雑言の裏に、売春婦蔑視を読み取るのはあまりに短絡的ではないかと思う。実際、好きになった相手がAV嬢や風俗嬢でも何ら問題を感じないという感性と、罵倒語として「売女」を叫ぶ感性が無矛盾に同居している人はいくらでもいると思う。また、自分の彼女や嫁が仕事で他の男と寝続けるのを嫌がることは、売春婦を蔑むことを意味しない。たとえ金銭を介さない関係でも嫌な人は嫌だろうからだ。肉体関係にセンシティブな人は多い。

そうした嫌悪感故に「売女」は罵倒語として強度を持ち続けているのだともいえそうだ。


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#タイトルは変だけど書かれている逡巡はとても共感できる。
#(差別ダメという)倫理観を曲げて実利を取る気持ちを捨てられないという話。

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