人は本当に自殺を減らしたいと思っているのか?

誰もが積極的に自殺をなくしたいと思っているわけでは、たぶん、ない。

自殺は止められなかったんだ
<自殺実態白書>地域性や原因分析 自治体別で初の全国集計(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

たまたまYahoo!ニュースを見ていたら、自殺原因の全国集計が発表されていた。様々な危険要因から上位10個が列記されている。調査によると自殺者は平均4つの危険要因を持つことで死んでしまうという。そして、1位を占めているのが「うつ病」である。またか、と思う。重度のうつ病によくある症状に希死念慮がある。明確な理由もなくふと死にたいと思うような状態だ。つまり、こういう症状が出だしたら、その人はうつ病と診断される可能性が高い。結局、うつ病だから自殺するというよりは、自殺するような人はうつ病と診断されやすいという方が事実に近いように思える。

ひとつ目のリンク先にあるような死への衝動は本人も含め確かにほとんど止めようがない。だから、遺族に責任を感じないで欲しいというのは、当人の気持ちとしては真っ当だと思う。けれども、遺族の悔恨の根は死そのものよりも、死を希うような状況を許し看過してしまったことの方にある。つまり、死んでしまったことはもちろん、「死にたい」と思われたこと自体が辛いのである。それが内因性のうつだったなら適切な薬物治療で死から遠ざけることができたかもしれない。心因性だったなら、死ぬほど追い詰められる前に気付いてあげられたら…。それを悔やむのだと思う。

極論すれば自殺の原因はディスコミュニケーションにある。人と人とは本当には分かり合えない。分かり合いたいと思った人間同士でもそうなのだ。しかも、多くの人は多くの人に無関心である。個人が興味を持てる人数には限りがある。誰かが緩やかに抑うつ状態に向かっている時、それに気付ける人は少ない。特に都市生活者のライフスタイルにおいては、他者との密な関係性を維持するのがとても難しい。自殺を図ったり言動がおかしくなったり、明らかな症状が出て初めて異変に気付いたりする。下手をすると死ぬまで気付かない。いや、死んでも気付かない可能性すらある。

強烈な希死念慮を持ってしまった人を止めるのは難しい。だから、自殺を止める最も効果的な方法は死を願うこと自体を回避することだ。たとえば、軽度のうつくらいでは人はそう死なない。回復の可能性も高いだろう。ただ、その段階では気にかける人も少ない。だから悪化する可能性が高くなる。つまり問題なのは、他人の辛さに人は案外冷淡だという現実である。本当に悪化して、極端な症状がでないと親身になれない。身近な人に対してさえその傾向は強い。自殺を減らそうと思うなら、ここをなんとかするしかない。人を死なせたくないなら、人に関心を持つしかない。

それでもやっぱり死なせるかもしれない。それを覚悟するのはとても難しい。

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