ニートの問題は誰のために議論されるべきか?

厚生労働省の統計によると2006年時点でニートの数は62万人だったという。

【ニートの本音】(1) 昼夜逆転生活、本当の理由 : コラム : ライブラリー : ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
【ニートの本音】(2) 「きまじめさ」…実は力の源 : コラム : ライブラリー : ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
【ニートの本音】(3)「働けない」のは自己責任か : コラム : ライブラリー : ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

これらの記事がどこまでニート一般に敷衍できる話なのか、ぼくには知る由もない。少なくとも、きまじめな性質とか過去の虐待経験とかいうのを、ニート62万人の典型例と読むのには少なからず抵抗を感じる。リンク先の記事の筆者が実際に接したニートの中にはこんな人もいた。そういう「ある特定のニートの本音」として読むべきなんだと思う。どちらにしても、基本的な論調としては、ニートへの偏見を捨てて彼らがうまく社会参加できるような環境を作りましょう、ということなんだろう。ニート利権云々というような話はおくとして、「ニートを救う」系の話と読める。

ところで、「ニートを救う=彼らが働けるような環境を作る」は真理だろうか。ニートが存在する環境要因のもっとも根源的なもののひとつは「ニートでも食っていける」ことだ。甘やかすやつが悪いとかそういうことをいいたいわけじゃない。現実のありようとして、勉強も仕事もせずそのための具体的な努力もしない15歳から34歳が、それでも生活苦で死んでしまったりはしないのである。いや、死んでしまう人もいるかもしれないけれど、死なないでニートをやれる人がこれだけ多いというのは動かしがたい事実だ。つまり、親に代表されるような庇護リソースが充実している。

日々畑仕事に精を出していても親の手だけじゃ家族が食えない。そんな環境なら子供とて働き手にカウントされるのは当たり前だ。でなきゃ死んでしまう。それなりに余裕があって、子供が子供のうちくらいは働かなくても食わせられる。そうなったら子供は働かなくていい。さらに進んで、一部の特権階級者たちのように、働かなくて済むだけのリソースと働かなくていいという社会的合意があれば、大人になっても働く必要はない。自分が利用できる限りのリソースを消費して生きる。そういうものだ。極論をいえば、ニートでいられる内はニートのままでいて何ら問題はない。

実際問題として、働きたいというニートはどうして働きたいんだろう。大人になったら働くのが当たり前だからか。世間がそう思っているからか。そう思っている世間の目に追い詰められているからか。或いは、仕事に自分の夢や生き甲斐を見付けたいのか。ニートをやっている現状が精神的に辛くて、そこから抜け出すために仕事に就きたいのか。少なくともニートに働かなければならない経済的な理由はない。ということは、働きたいというのは純粋に気持ちの問題だ。もしも、働かずに食えるうちは働かないのが当たり前、という世間に生きていたら働きたいと思うだろうか。

ニートが食い詰めてバタバタ死んだりしないのは、それだけ社会に余裕があるということだ。たぶん、悪いことではない。ただ、ニートは今後日本という国の生産性を下げ続けるかもしれない。すると将来的にはもう少し厳しい社会になって、未来のニートを養う余裕なんかはなくなるかもしれない。これはもう日本という国をどうすべきかという問題だ。そのために論じられるニート問題は、ニートのためではなく社会のための議論である。ニートのためだけを考えるなら、たとえば「ニートを救う=ニートにも社会的承認が与えられる環境を作る」という選択肢があってもいい。

いずれニートを社会問題と捉えるなら、心情を斟酌するのも社会のためということになろう。


【関連して読んだサイト】
読売新聞連載「『ニート』の本音」 - Peppermint Blue

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まずは現状認識から

ニート 何人 政府内にデータ混在 「家事手伝い」含む? 85万か64万か
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_05060601.cfm

【韓国】 増えるニート、15-29歳の6人に1人 [12/24]
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1198458987/

>  ニートが15-24歳の人口に占める割合は、韓国で11.7%、OECD加盟国平均で12.0%とほぼ
> 同水準だが、本来働いていなければならない 20代後半を含めた15-29歳で見ると、韓国では
> ニートの比率は17%に高まり、加盟国平均を大幅に上回るという。

日本は2004年でニートが52万人、15-34歳人口に占める割合は1.6%
「家事手伝い」も含めた総数85万人でも2.6%超にしかならない
韓国、OECD平均の10分の1

> fooさん
情報ありがとうございます。読売の方はすでにリンクが切れているようです。2ちゃんねるの方もViewerがないと読めないみたいですね。
いずれ、2.6%という数字をどう見るかは、何と比較して問題視するかによるんだと思います。過去の日本と比べるのと、お隣の国の現状と比べるのとでは印象も違ってくるかもしれません。それにしても、韓国の17%という数字は、鵜呑みにするならちょっと尋常じゃないですね。15-24歳の6人にひとりはニートということになってしまいます。

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