ボクノタメニ泣イテクレOut of the mouth comes evil.

コンピレーションCDを作るのが流行っている。

社内というか、チーム内というか、とにかく極めて狭い範囲での流行である。よく音楽やオーディオの話をしていた上司がやたらBauhausをプッシュしてくるのでとりあえずデビューアルバム“In the Flat Field”を買ってみた。なるほど、ちょっとキレたグラムロックといった趣でかなり面白い。T.Rex‘Telegram Sam’のカバーが入っていたりする。

上司は80年代UKロックフリークである。デスクにはシド・ビシャスの写真が飾られている。ベースの弾けないベーシストにして、薬物中毒で自沈した伝説のパンクロッカー。理論やテクニックではない常軌を逸して過剰な何か。そんなものは大抵、虚飾に満ちた張子の虎である。けれども、そういうものが好きなんだろう。ぼくだって嫌いじゃない。

それはさておき。

Bauhaus面白いっすねー、とか、好きなロックをガンガンかけるクラブイベントしたいなー、とかいうような話をしていた数日後、マメにラベルプリントまでされたCDを手渡された。“Club Rock!”と題されたそれは、もちろん上司選曲のオリジナル・ロック・コンピレーションである。これまで聴きそびれてきたアーティストが結構入っている。

1. Rock the Casbah / The Clash
2. Conquest / The White Stripes
3. Whole Lotta Love (Radio Version) / Goldbug
4. New Europeans / Ultravox
5. Public Image / Public Image Ltd.
6. Third Uncle / Bauhaus
7. Devils Haircut / Beck
8. About A Girl / Nirvana
9. Icky Thump / The White Stripes
10. The Caterpillar / The Cure
11. Bigmouth Strikes Again / The Smiths
12. Last Night / The Strokes
13. The Lebanon / Human League
14. Cannonball / The Breeders

いわゆるロックにカテゴライズされるのかどうか微妙なアーティストも入っているけれど、選曲基準は楽曲そのものがロックが否か、である。要するにこれが上司のロック観であり、好みの音だということだろう。ちなみに、The White Stripesはぼくが勧めて買わせたようなところがある。オルタナティブなはみ出し具合が好みに合ったのだろう。

多少なりとも聴いたことがあるのは、PIL、Beck、Nirvanaくらいで、それ以外はほとんど名前に聞き覚えがある程度。Goldbug、Ultravox、The Breedersあたりになると、名前すら知らなかった。この名前すら知らなかった中でも、Goldbugの‘Whole Lotta Love’は強烈で、Led Zeppelinの曲がえらいことになっている。

何度か聴く内に耳に残ったのも未知のアーティストの曲で、The Breedersのアルバム“Last Splash”は後日オンラインで購入してしまった。‘Cannonball’がいかにもオルタナっぽい音だったのに比して、アルバム全体の印象は意外にポップなものだった。もちろん素直なポップロックというわけではない。ただ、意外なラインナップではある。

このコンピレーションを受けて、ぼくはよりオルタナとかミクスチャーとかメタルとかに傾いた轟音ロック・コンピを作った。1時間みっちり爆音に浸れる選曲で、バラードみたいなものは1曲も入っていない。だいたい、ぼくはそれほどバラードというのが好きじゃない。ともあれ、ハイテンション且つ疲れるコンピなのだけれど、それはまた別の話である。

色んな人の「最強ロック・コンピ」を集める。

そんな企画も面白いかもしれない、と少し思った。