韓国ドラマ“チェオクの剣”のラストに痺れる

チェオクの剣NHKで放送していた韓国ドラマ“チェオクの剣”が終わった。

正直にいえば“宮廷女官チャングムの誓い”の惰性で見ていた感が強い。それでも最後まで観たわけだから、もちろん、まるでつまらなかったわけでもない。ただ、このドラマの愉しみ方を把握するのに少し時間がかかったということはいえる。

チャングムに引きずられていた。つまりは、そういうことだ。何しろどちらも時代劇で、衣装やなんかも見慣れたものだった。クーデターや宮廷内の駆引きなんかを背景に、主人公らが苦労したり悲恋に泣いたりするという外枠も似ている。

ところが、似ているのはここまでで、力点の置き場所がまるで違っている。だから、当然ドラマから受ける印象もまったく違う。だいたい、“チェオクの剣”は全然大河ドラマではなかった。全14話。全54話もあるチャングムと比べるような種類のものではない。

要するにまずもって心構えを誤った。最初の5話くらいは小手調べくらいの気持ちでいたのである。そんな風に腰を据えて観ることに慣れていた身には、あまりにも展開が速すぎた。そこ、もっとネットリといこうよ、というオイシイ話がどんどんスルーされていく。

まったくもって物語の描き込みに主眼のあるドラマではない。

韓国ドラマといえば悲恋というのが相場であるらしい。その意味で、この時代劇は、ほとんど現代劇の感性で描かれているのだと思う。身分違い、敵同士、3角関係、生き別れの兄妹…この手の悲恋を効率的に演出するために時代劇を選んだ。そういうことなんだろう。

すべてが悲劇のための装置として準備され、そのためなら多少のご都合主義も辞さない。そんな割り切りが全編に渡って溢れている。涙に帰結しないディテールなどは最小限まで切り詰められ、折角大きな外枠を持ちながら、これを活かすことは端から放棄されている。

悪くない思い切り方だと思う。

キャスティングがとことんビジュアル重視なのもいい。とにかく3角関係を演じる3人が美形である。文武に優れ清廉な正統派ファンボ・ユン、ワイルドな風貌に少年のような目を持つチャン・ソンベク、凛とした靭さに手折りたくなるようなか弱さを併せ持つチャン・チェオク。

彼ら美男美女のとことんまで悶え苦しむ姿こそが、このドラマ最大の見所であり、人気の理由だろう。正直なところ、チェオクが可愛くなかったら、途中で見るのを止めていたかもしれない。それほど彼らのルックスは大きな比重を占めている。

とにかくキメのシーンを愉しみ、空白を妄想で埋める。

つまりはこれなんだと、気付いた頃には後半戦に突入していた。例えば、娘思いの父親が仲間のために凄絶な死を遂げる。日本でいえば弁慶タイプの討ち死にである。制作者は是非ともそのシーンを撮りたかったんだろう。そこに到るまでの掘り下げなどはないに等しい。

これはまあ、一例だけれど、こうした小さなクライマックスがいくついくつも積み重ねられていく。道程はいつでも最小限。だから、とにかく展開が速い。全話が小さなクライマックスみたないドラマである。しかも、それらさえ最終話のための捨石みたいなものなのである。

いわばジェリー・ブラッカイマー方式の韓流ドラマである。

ラストシーンは、大いなる予定調和、予想通りの超悲劇的結末である。分かっていても思わず唖然とする、そういう類の幕引きである。あざといというならこれ以上ないくらいにあざとい。ただ、ここまでやられると、文句の付けようもない。天晴れ。つい2回も観てしまった。

それくらい力のあるラストである。

これから見ようとかいう奇矯な人がいるなら、是非前半戦を耐え抜いて欲しい。後半の怒涛の展開は、色んな意味で本当に面白い。シリアスにも斜視的にも、だ。描き込みが甘いということは、妄想の余地を多く残しているということでもある。中毒者を出す所以だろう。

韓流といえばオバちゃんのものというイメージがある。確かにこれもチェオク視点で見れば美男2人にモテまくる逆ハーレムストーリーだ。けれども、男性諸氏が愉しめる視点もちゃんと用意されている。ユン視点の「メイド萌え」とソンベク視点の「妹萌え」である。

つまり、男が存分に愉しめる韓国ドラマなのである。


【関連リンク】(※よくもまあここまで…というブログたち。良い意味で。)
緑湾Blog//チョイ悪オヤヂの茶母嬖人な生き様(T▽T)
チェオクの部屋

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とりあえず来ました。

阿智胡地亭さん、いらっしゃいませ。
BLOGariと違ってどなたが見にこられたのか分からない分、こうしてひと言でも残していただけると、嬉しいです。更新頻度は落ちっぱなしですが、気が向いたらまたお越しください。そちらにもまた伺います。(そういえば、3月19日付の堀江裁判の話…あれをニュースで耳にしたときは思わず失笑してしまいました)

遅くなりましたが・・・
「チェオクの部屋」の管理人です。
ご紹介くださりありがとうございます★
私も何故ここまで のめりこんでしまったのか
正直分かりません。(笑)
やばいですっ!

chappiさん、いらっしゃいませ。
もの凄いバイタリティだなぁと、恐れ入りながらこっそりと拝見しております。質量ともにあれだけ更新を継続するとなると、かなりの時間と労力を費やしてるんじゃないでしょうか…。
これからも存分にのめり込み続けてくださいね。(笑)

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