このエントリーでぼくは逮捕され、実刑判決を食らうだろうか?

殺人予告文の文脈はどこまで読まれるべきか。

あくびして退廷…「小女子焼き殺す」書き込み被告に有罪 - MSN産経ニュース
小女子を魚というのが悪質という裁判官とそれを支持する者は、問題が全く見えていない - kentultra1の日記
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愉快犯の存在を誰かが通報し警察が逮捕した。ここまでは何の問題もない。「愉快犯」に殺意があるかどうかや、「誰か」の通報が遊び半分であるかどうかなんて関係ない。この段階ではまだ何かを判断する必要はない。いい換えれば、まだ間違いがあってもいい段階だ。もちろん、常識的に考えて通報はないわ…という事案ではあるだろうけれど、何事にも100%が存在しない以上、冗談で通報したら本当に犯罪防いじゃった!という可能性も無視はできない。問題はその先である。裁判というのは「真実」を決定するものではもちろんない。「妥当な判断」をするためのものだ。

つまり、通報から逮捕まではどんなに下らなくて、どんなに非常識でも構わないけれど、判決にはこれ以上ないという、考え得る限り最高の「妥当性」が求められる。そして、リンク先のはてなブックマークやなんかを見る限り、割りとこの小女子判決が妥当だと考える人はいるようだ。「妥当性」というのは究極的には「多数決」に回収され得る。多数を納得させることが、即ち妥当ということになる。であれば、この判決に多くが納得することは、その妥当性を担保することになる。そしてこの判例が今後、類似の裁判に影響を与えることになる。これはなかなかにスリリングだ。

たとえばぼくがネコっ可愛がりに可愛がっている姪について日記を書いたとする。「明日は●●幼稚園に姪の○○にゃんをお迎えの日。まじテンションあがる。兄夫婦のルックスからは考えられん可愛さ。食べちゃいたいくらい。いや、むしろ食べてやる!○○にゃん覚悟しろよ~♪」とかなんとか。或いは、ブログでケータイ小説を書くとする。「おれニート/もちろん非モテ/集団登校の子供/眺めて溜息/子供マジウザイ/全員犯して殺す/明日ヤル/ぜってーヤルぞ/ゴルア」とかなんとか。これを善意の(或いは悪意の)第3者がうまく抜粋して転載、通報したとする。

2chやらなんやらにどんどんコピペされ騒動拡大。たとえば兄嫁が転載された文章を偶然見付けて、「これうちの○○ちゃんのことじゃないの?あの義弟やっぱり変態だったんだわ!おかしいと思ってたのよ!まあ大変!」と大騒ぎし警察が出動、幼稚園は物々しい雰囲気に包まれる。或いは、IPやらmixiやら何やらからある程度地域が特定され、匿名掲示板で近隣小学校への警告文がコピペされる。それを父兄の誰かが発見、PTAやらなんやらに波及。集団登校に警察の警備だ何だと大騒ぎになる。そんなことになった場合、ぼくは言い逃れることができるだろうか。自信はない。

何気ない日記のふりをして実際に犯行を考えていたのではないか。小説の体裁を借りて本物の欲望を書き綴ったのではないか。そうした他人の疑念を完全に否定することはできない。自分の思考の潔白を証明することは誰にも不可能である。そして、もしもその気がなかったとしても周囲を騒がせるような文章を公衆の場に公開したことは悪質であると断罪されたとき、その妥当性を決定する権利はぼくにはないのだろう。文脈を読んでくれ、という訴えは、判例を見る限りあまり効果を持ちそうにない。そうなると、ぼくにできることは粛々と罪を認める以外ないように思える。

いや、文脈を読まれないとなると上に例示した文章でさえ有罪かもしれない。

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> 「おれニート/もちろん非モテ/集団登校の子供/眺めて溜息/子供マジウザイ/全員犯して殺す/明日ヤル/ぜってーヤルぞ/ゴルア」
スゲーライムだ!

> Yuu Arimuraさん
例の「あたし彼女」を読んでからというもの、ケータイ小説といえばライム上等だろ?的な洗脳が完了してしまったようです。影響受けすぎ!

TBありがとうございます。まさに仰る通りの危険をこの事件は孕んでいますね。エントリは書きましたが、少なからぬ人にそういう事への想起や認識を提供出来ていない事が残念です。

> kentultra1さん
エントリー中で文脈文脈と繰り返していますが、正直にいえば、ぼく自身、裁判であの判決が下されるまでの文脈を詳細に知らないままこれを書いています。その意味で、このエントリーで危惧しているような危機認識がどこまで正しいのかは相当に不透明です。その上でニュースでの取り上げられ方だけ見れば、こうした危機感も持ち得るよ、ということが伝わればいいかな、と。援護射撃というには些か頼りないスタンスですみません。

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