考える前にググれ、それから考えよ

考えることは人生を愉しむためにとても有効な行為だ。

Life is beautiful: 自分で考える前にググっていませんか?

いいことが書かれていると思う。大事なところで「確信犯」の語義を勘違いしているのは少し残念だけれども、それでも面白い提言であることに変わりはない。とりあえず「考える前にまずググる」ことについては、功罪があるということに気付かされた。功はいうまでもない。思考に広いパースペクティブを与えるための情報が豊富に手に入る(可能性が高い)ことだ。そして罪は、他人の思考を自分の思考として無批判に取り込んでしまう危険性ということになろう。しかも、これは無自覚の内にそうなる可能性を秘めている。この点、注意してしすぎることはない。

ぼくは自分の考えというものにあまり期待していない。自分が考える程度のことは誰かがとうに考えている。そう思っている。自分ひとりの考えには限界がありすぎる、そういう自覚がある。そんなぼくにとって「ググる」ことは、自分の小さな限界を広げるための手段となる。リンク先では「自分で考える前にまずググる」ことと「ググれば答えが見つかるにちがいない」という錯覚が同時に問題視されている。けれども、前者と後者は必ずしもセットになっているわけではないだろう。そして「自分で考える前にまずググる」ことにそれほど罪はないんじゃないか。

「答え」という言葉には幅がある。狭義の「答え」をググって見付けることは悪くない。辞書、辞典、或いは事典的な用法である。これは信憑性の部分に気配りさえできていれば、どんどん利用すべきだとさえ思う。危険なのは答えらしい答えのない問題について、答えを見付けたつもりになることだろう。リンク先の例でいうなら「小論文」は自分の考えを書くものであって、狭義での「答え」を書くべきものではない。求められるのは自分なりの答え、という広義での「答え」である。他人の「答え」を見て思考停止するのは、思考の愉しみを放棄することである。

だから、ぼくは思う。「自分で考える前にググって『手っ取り早く答えを見つけてくる』ことを習慣的にやってきた学生」は確かにちょっと心配だけれど、自分で考える前にググって『手っ取り早く情報収集してから考える』ことを習慣的にやってきた学生なら見込みはあるんじゃないか。perlであるシステムを作るのに、すべて自分ひとりで考えて作る必要はない。どんどんググって先人の知恵を借りればいい。けれども、「perlで何を作るべきか?」はググって見つけるものじゃない。そのためのヒントを集めるのはいいけれど、考えるのは自分の仕事だ。

畢竟、考える前にググるのは自分の思考を広げるため。狭めるためにやるものじゃない。


【関連して読んだサイト(追記)】
考える前にもっとググっていいんだよ - Skepticism is beautiful
#もう端的にまとめられていた。似たようなことを考える人はいくらでもいる、の実例。

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comment - コメント

はじめまして。book reviewともどもいつも楽しみに拝見させてもらってます。。自分自身、日常でのやり取り含めてかなりコピペ体質が強いように思いますが、幾つかの情報を基に(というか継ぎ接ぎして)「自分の意見」を組み立てるのって、確かにナンも無い時点から思考するのと比べて、アタマの「発想力」的な部分をどんどんと減衰させていってるようには思います。ただ、結果的に出てくるもののどっちが優れてるか?って考えると、あながち前者の継ぎ接ぎが悪くなかったりするのでなんとも・・・。その辺、lylicoさんの言う【ぼくは自分の考えというものにあまり期待していない。自分が考える程度のことは誰かがとうに考えている】って部分に通じるとろこはあるのかなぁと。効率は2の次で半ば無駄に考え尽くすことって、脳にとってはある種の愉楽なんだと思いますが、実利的にはどうなんだろ?と今の忙しない生活を見てふと考えました。

> かっつんさん
探してすぐに見付けられる程度の考えは、他所から仕入れてショートカットしてしまう。それから、見付けられなかった領域に思考を遊ばせる。そうすれば、十分に自分の頭で考える愉悦を得られるんじゃないかとぼくは思います。他人の思考から刺激を貰って燃料にするわけです。10人が同じテーマで話す会で10人目の発表は辛い。当然、考えてたネタなんて全部出ちゃったよ、なんてことになります。でも、そこから懸命に前9人が到らなかった場所に行こうとすることは、凄くエキサイティングなことだと思うんですよ。出てくるものが優れているかどうかは別として。Googleはこの前9人だと思えばいいんじゃないでしょうか。効率や実利のためだけに使うなら、たぶん必要なのは検索スキルと選定眼ですね。これはこれで頭を使う作業だとは思いますが、考え抜いたという充実感には乏しいのかもしれません。

はじめまして。ググってたどり着きました。
エントリに激しく同意です。というか、同じこと考えてました。
その他エントリも、色々と興味深い内容と鋭い視点ですね。
今後も楽しく拝見させていただきます。

> 三茶さん
記事中にも書きましたが、同じようなことを考えている人は結構いるんでしょうね。そんな中にあって、ぼくのエントリーに少しでも面白いと思ってもらえる要素があったなら嬉しく思います。
それにしてもこのブログにググってたどり着かれる方というのは稀少です…。まあ、ノンジャンルかつ無名だからSEO的に弱いということが大きいんでしょうけれど。

最近、インターネットがない時代にどうやって調べ物をしていたのか忘れてしまいました。
今、ネットワークに繋がっていないPCで"Hello world"コードすら書けるか不安です。
インターネットの功罪相半ばかもしれませんね。

> tamanegiさん
ぼくもインターネット依存度は結構高まってますね。メールはもちろん、タスク管理や簡単なスケジュール管理まで、少なくとも仕事に関していえばないと不便な思いをすることは間違いありません。調べ物については今からペーパーメディアに頼っていた頃の自分に戻るのは、情報の鮮度の点で周囲に大きく遅れを取ることになりそうで、少し怖くもあります。

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