ノートルダムを冠する結婚式場

アンジェリカ・ノートルダム昨日は友人の結婚式だった。

‘アンジェリカ ノートルダム’という、たいそう立派な名前の式場である。特に下調べもせず、招待状の地図だけを頼りに行ったのだけれど、これがえらく豪奢なゴシック建築で驚いた。未だ拓ききっていない郊外の土地に、突如現れた非日常といった趣である。

実際、式の中身も中々に贅沢で、司祭、オルガン、コーラスの他に、‘アヴェ・マリア’を歌うソロ歌手や、フルート、トランペットまで出てきて、式中すべての音楽がライブという心憎い趣向である。教会建築特有の残響音も申し分なく、厳かな雰囲気を盛り上げていた。

天井の高い聖堂も立派なもので、昨年できたばかりとは思えない重厚感を漂わせている。巨大なステンドグラスをはじめ、いかにもカトリック教会的な装飾類もずいぶんと凝ったものだ。受難の物語を模した立体絵画や、聖人像など、適度な古色がつけられていて悪くない。

あらゆる式というのは文字通り形式のものなのだし、雰囲気が全てといっていい。ならばこの式場は十分以上にその役を果たしていると思う。大いに壮麗かつ厳粛なムードを湛えていて、式場の雰囲気を見て決めたという新郎の話にも大いに納得である。

ノートルダムといえば、世界的に最も有名なのはパリのノートルダム大聖堂だろうか。ヴィクトル・ユゴーの小説『ノートル=ダム・ド・パリ』のそれである。周辺の文化遺産とともに、ユネスコ世界遺産にも登録されている。もちろんぼくは行ったことも見たこともない。

ノートルダムを冠した聖堂は世界中に沢山あるらしい。そもそもノートルダムというのはフランス語のNotre-Dame、英語でいえばOur Lady、つまり私たちの貴婦人という意味で、要するに聖母マリアのことである。あちこちにその名を冠した聖堂があるのも頷ける。

式場のサイトを見てみると、こちらはどうもアントワープのノートルダム大聖堂がモデルになっているらしい。日本人の大好きな“フランダースの犬”に出てくるあの大聖堂である。全高123mを誇る実に壮麗なゴシック建築で、特に日本人観光客には人気のスポットであるようだ。

もちろん、結婚式場でそこまで馬鹿でかい聖堂を建てるわけにもいかない。モデルにしたとはいっても、サイズは半分程度のものである。それでも高さ60mといえば決して卑小な建物ではない。雲をつくとはいかないまでも、十分に立派なものである。

式の空気感、披露宴の食事ともに申し分ないクオリティで、軍資金がどれほど注ぎ込まれたのかは分からないけれど、いつもオシャレなふたりには実に似合いの式だった。女の子にしては長身の新婦のドレス姿など、凝った髪型とも相俟ってまるでモデルのようだった。

ああいう場で映えるふたりのルックスが羨ましい。

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