少し長めの前フリと痴漢を減らす大味な方法論

痴漢はこれといって特別な犯罪ではない。

人を殴っちゃダメだというのとなんら変わらない。ただ、特別視する社会があるだけだ。それは、加害者にも被害者にもあまりいい影響を与えていないように思う。たとえば、ムシャクシャして人を殴る。たまたま同じ電車に乗り合わせた相手で、イヤフォンから漏れる音にイラっとしてやってしまった。その後喧嘩になるか、周囲の人を交えてひと悶着あるか、警察に引き渡されるか、殴られた方が泣き寝入りするかは分からない。いずれ示談になるかどうかして終わるケースが大半だろう。殴った方が社会的に干されるとか殴られた方がキズモノ扱いされるなんてことはまずない。

これが、殴り殺した、となると話は大きくなる。当たり前だ。裁判に量刑というものがあるように、社会的な風当たりにも程度問題というのはある。これが痴漢になるとどうも様相が変わってくる。まあ、性犯罪全般にいえることかもしれないけれど、酷くナイーブだったりヒステリックだったりする。被害者に対しても、加害者に対しても、だ。殴られてニュースになった女の子と、性犯罪に遭ってニュースになった女の子。同僚を殴った会社員と、同僚に痴漢行為を働いた会社員。そこには程度問題だけではない違いがあるように思う。その色眼鏡が事態をややこしくしている。

どんな犯罪にも冤罪は起こり得る。にもかかわらず、痴漢冤罪が他よりも起こりやすいのだとしたら、それは端的にいってシステムの欠陥ではないかと思う。それもくだらない「色眼鏡」がシステムに穴を開けている可能性が高い。性が絡んだ途端、告発そのものが抑圧されるとか虚偽告発が有利なるとか、そんなシステムは欠陥品に決まっている。痴漢を不当にカジュアルに考える人も不当に重大視する人も、同じくらいバランスを欠いた迷惑な存在である。お陰で「女性専用車両」なんてトンチンカンなものができる。「ごく一部の性」を隔離しただけで犯罪抑止とはあんまりだ。

痴漢を書類上の男性が書類上の女性に行うものだと単純に考えるからこんなことになる。ぼくみたいな平凡な外見の男でも何度か尻やら股間やらを男に触られている。彼らが(「彼」と呼ぶべきかどうかは不明だけれど)どういった性志向を持った人間かは知らない。ただ、いわゆる同性愛者かどうかに関わらず、或いは、恒久的な志向かどうかに関わらず、同性の何かに性的な興奮を覚える可能性はあるだろうし、それを特別おかしなことだとは思わない。「成人男性専用車両」「老婆専用車両」「幼女専用車両」「少年専用車両」…何が正当かは、一度よく考えてみるべきだろう。

たとえば、ラッシュの電車内が痴漢の温床になる。改善すべきは「犯罪が起きやすい環境」そのものではないか。たとえば、通勤と通学のピーク時間をずらす。これだけでも、ラッシュ緩和にはそれなりの効果があるように思う。ついでに、女子高生が制服のスカートに精液をぶちまけられるなんて惨事も減るんじゃないか。或いは、学ランフェチのオジサマの毒牙にかかる美少年被害者も減るはずだ。或いは、電車に定員を設けて法的に詰め込み運転を規制する。多くの人がラッシュに耐えて移動しなければいけない状況がそもそも異常なのである。心にも体にもいいとは思えない。

ラッシュが違法となれば、社会がそれに合わせて変わらざるを得ない。時間差通勤なんてスローガンも制度化されて実効性を持ち得るかもしれない。少なくとも「女性専用車両」なんて特権的な措置を取るよりは、よほど穏当な処置だと思う。まあ、結果的に電車以外の交通手段に人が分散して鉄道会社の業績が悪化するとか、まったく別の問題が浮上する可能性はある。それでも、ラッシュを温存することの功罪を秤にかければいずれ罪の方に傾くように思う。もちろん、それで痴漢が撲滅できるとは思わない。防犯カメラを付けるとかガードマンを雇うとか、あとは程度の問題だ。

犯罪が起こりやすい環境があるなら、とりあえず環境を変えてみてはどうか。

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