君は「ボブの絵画教室」を見たか?

diary070309.jpgあのボブ・ロスがセットになって帰ってくる。

最近バイラル広告を仕掛けた輩がいたとかいないとかで、ずいぶんとあちこちで話題になっているから、すでに知っている人も多いかもしれない。そんなマーケティング手法の話とは無関係に、とにかくまた彼の雄姿を見られることがぼくは純粋に嬉しい。

そう、もうすぐ彼に会える。

3月23日が待ち遠しい。もちろん本当にかの人が帰ってくるわけではない。何しろ、ボブは1995年に他界している。盆でもないのに、死人が帰ってくる道理はない。それにここは日本で、彼はアメリカ人だ。帰るにしても京都などではなく、フロリダかアラスカ辺りだろう。

冗談はさておき、ついに彼のDVD-BOXが出る。といっても、彼はショービズ界に生きた俳優や歌手やなんかではない。ボブロス画法と呼ばれる独自の油絵手法を編み出した異才、飄々として軽妙なキャラクターで人気を博した驚異の髭アフロ・ペインター、手短にいえば画家である。

アメリカで10年以上も続いた異例の長寿絵画番組‘The Joy of Painting’は、ここ日本でもNHK-BSで「ボブの絵画教室」として放送されていた。もう10年以上も前の話である。偶然チャンネルを合わせたぼくは、たちまち彼の虜になってしまった。

ぼくは絵など習ったことはないし、そもそも油絵に触れたことすらない。そんなぼくにとって、この番組は驚愕の絵画エンターテイメントだった。大小さまざまな筆や刷毛、数本のナイフと10色程度の油絵の具、そして僅か30分弱の時間だけを使ってボブは風景画を描き上げる。

もちろん料理番組のように途中を飛ばしたり、どこかで調理したものがでてきたりはしない。本当に番組時間内で仕上げてしまう。真っ白なカンバスがあれよあれよという間に色づき、表情を変え、最後には空想の情景が、時に幻想的に、時に雄大に浮かび上がってくる。

薄ぼんやりとした背景に、遠く木々がさざめき、山間からはいかにもひんやりと冷たそうな川が流れてくる。大きなカーブを描く川岸には黒々とした立派な樹が生え、少し離れた平地には小屋が建つ。常緑樹が陽光を反射し、川面に緑を映し出す。

そんな風にして、ボブは気の向くまま筆の赴くままに風景を描き出していく。いかにも気軽に話し続け、描き続ける半時間。ぼくが知る吹き替え版の、穏やかで、どことなくユーモラスな口調もまた心地好い。石井隆夫という人がやっていたらしい。

ボブの絵は芸術的ではない。けれども、これほど絵を描く楽しさを伝えている絵画教室も他にないだろう。彼はいう。「ほぅら、簡単でしょう?」「失敗なんてありません」「好きなところに描いていいんです」…彼の迷いのない筆運びは音を奏でるようにリズミカルである。

そこに呻吟する芸術家の影などは微塵もない。

これを見ると、きっと誰もが絵を描きたくなる。描けるような気持ちにさえなるかもしれない。それはもちろんボブの魔法である。練習しなければあんなふうに自在に描くことはできない。当たり前だ。だからダメだというのではない。だから素晴らしいのである。

少しずつで良いから是非商品化を続けて欲しい。


【関連リンク】
ボブ・ロス “THE JOY OF PAINTING1 DVD-BOX”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 パステル色の海”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 荘厳な山”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 枯れ葉色の冬景色”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 秋のイメージ”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 山の湖”
ボブ・ロス“THE JOY OF PAINTING1 移り行く季節”

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ボブ・ロスが亡くなっていたのは知りませんでしたが、
まだ子供が幼い頃、一緒に番組を良く観てました、
勿論大人が見ても楽しいものでしたし、私のように絵心の無い者でも、
上手く描けそうに思わせる、まさに魔法でした。

以前は、ボブの絵画セットを良く売ってました、
あの番組をもう一度観たら、買いたくなるかも知れません。

MASAさん、いらっしゃいませ。
ボブの絵画セット…調べてみると、今でも普通に手に入るようですね。ネットショップ系を回ってみると、ベーシックセットで1万円弱、マスターセットなら1万6千円ほどで売ってますね。週末画家を気取れるほど余裕ができれば、思わず買ってしまいそうです。

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