Microsoft Word を程よく使うことを勧める

実はMicrosoft WordとHTMLは結構似ている。

Wordというと誰でも使えるワープロソフトというイメージが強い。けれども、思い通りに使いこなしている人が少ないソフトでもあると思う。実際、仕事の現場ではWordで作成された様々な文書が飛び交っているけれど、使いこなしていると思う文書に出会うことは、まず、ない。本来想定されている使い方は、ほぼされていないといってもいい。

かくいうぼくも、Wordの使い方など改めて勉強したことなどないし、マニュアル本の一冊も持っていない。だから、まず使いこなしているとはいい難い。基本を心掛けている程度である。そもそも、この基本的な使い方が一般にあまり浸透していないのである。要するに、誰でも使えるワープロソフトというには複雑に作られすぎているのだろう。

まず、強制改行と段落を使い分けられていることが稀である。もっというなら、実際に受け取った文書でこれを正しく使い分けているファイルに出会ったことがない。これはHTMLでいうなら<p>と<br>の使い分けに相当する。おそらく、Enterを押すと改行だと思っている人は多い。これが最初の落とし穴である。Enterは改行ではなく、改段落である。

だいたい、文章作成における改行というのは案外特殊な行為である。ひと繋がりの文章なら、行など改めずに右端で自動的に折り返していくのが普通だからである。そういうわけだから、強制的に改行するにはShift + Enterという少々面倒な操作が必要になる。こうすると、段落を分けずに行を改めることができる。決して頻繁に使うものではない。

この段落の概念を知ることが、おそらくはWordを自在に操るための第一歩である。

たとえば、段落と段落の間に隙間が欲しいときEnterを連打する。これはひと文字も中身のない段落を幾つも文書内に書き込んでいることになる。文字通りナンセンスな行為である。段落前後の隙間なら、ちゃんと数値で設定する方法がある。それを使えば、隙間の広さを自由にコントロールできる。思い通りのレイアウトを実現するには必須だろう。

もうひとつ文章のレイアウトにとって重要なのが行間である。これもまた、段落ごとに数値で設定することができる。初期設定ではページ設定の行数に合わせて自動的に決められてしまう。なんともありがた迷惑な機能である。外観を自在にコントロールしたいなら、この初期設定の呪縛から逃れることから始めなければならない。

このあたりの基本を押さえた後、次にスタイルの概念を理解するとWordの利便性は飛躍的に向上する。フォント、文字サイズ、文字色、網掛け、罫線、行間などの設定を、スタイルとして登録しておける機能である。「標準」「見出し」など最初から用意されているスタイルをカスタマイズしたり、新たに独自のスタイルを追加したりできる。

たとえば「見出し1」というスタイルにMSゴシック、18pt、赤色の太字で、背景は黄色、オレンジの下線を引く…というようなスタイルを設定しておく。すると、それ以降は大見出し扱いにしたい段落に「見出し1」というスタイルを適用するだけで、設定した外観を再現することができる。その際、自動的に段落番号を付加するなんて芸当も可能だ。

さらに、スタイルには文章を構造化する役割もある。

「見出し1」「見出し2」「見出し3」にはそれぞれレベルが設定されている。HTMLの<h1>、<h2>、<h3>と同じようなものだと思えばいい。スタイルは外観だけを云々する機能ではないのである。いわばHTMLとCSSを同時にセットするような感覚だ。これは文字修飾に意味を持たせるという点でとても重要な機能である。自然、構成を意識した文章作りを促す。

そして、これをきっちり作り込んでおけば、たとえば目次が自動的に生成できたりする。ページ数も段落番号も全自動で割り付けられる。万が一ページ数が増減しても、目次を修正する必要はない。勝手にアップデートされる。印刷時には関係ないけれど、パソコン上では目次がそれぞれの見出しにオートリンクしている。クリックで飛ぶのである。

ページ数の多い資料を作るときなど、こうした機能を使いこなしているか否かで作業効率は雲泥の差である。外観の美しさと作業効率は併存し得る。もちろん、専用のグラフィックツールを使ったような精密さは望むべくもない。けれども、気持ちよく読ませるビジネス文書くらいなら、ちょっとしたスキルで劇的にキレイな文書が作れるようになる。

Wordはちゃんと使えばかなり使えるソフトなのである。

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