一般人がインターネットを使わない本当の理由

一般人の定義は面倒なので普段テレビを見る人と同程度に多勢に含まれる人としておく。

一般人はそこまでネットを使わない - タケルンバ卿日記

ぼくの両親なんかは、まず、パソコン自体をそれほど使わない。使っていても大抵は必要に迫られてワープロソフトやメールソフトなんかを触っているくらいだ。ウェブだってそれは変わらない。必要に迫られてどこだかの地図を調べるとか、電車の時刻表を調べるとか、その程度の使い方しかしていない。これはぼくの両親が年だからかというとそうでもない。同年代の友人でも似たようなものだ。常時パソコンに接するような職に就いている人は別として、やっぱりインターネットを頻繁に利用している様子はない。毎日必ずネットに繋ぐなんてのは極めて少数派だ。

彼らとぼくとの決定的な違いは、特に用がなくてもネットに繋ぐかどうか、にある。見たい番組が特になくてもテレビをつけるという人は多い。けれども、何か面白いものはないかとネットを繋ぐなんて人は稀だ。少なくとも、ぼくの周囲にそういうタイプの人間はあまりいない。そういう人たちを見てぼくたちジャンキーは、こんなに便利なのに、とか、こんなに面白いのに、とか思っている。本当にそうだろうか。そもそも目的として、「便利」と「面白い」が同居していること自体、いかにも分かり難い。一般に普及するものは大抵目的がハッキリしている。

しかも、インターネットが提供する「便利」は、冷蔵庫や洗濯機や自動車ほど一般的な生活にインパクトを与えるものではない。その上、代替手段があるものも多い。辞書も地図も時刻表もペーパーメディアがいまだ健在だ。たいだい、日常生活に必要な情報なんてものは高が知れている。且つ、日常生活に密着した情報ならインターネットに頼らずとも手に入る。それ以上の情報や利便性を求めるのは、興味であったり、向上心であったり、探究心であったり、およそ一般的ではない動機を持ったときなんじゃないか。ネットの「便利」なんてその程度のものである。

もっと難しいのはネットの「面白さ」だ。一般人を見ていてぼくたちがまず思うのは、その検索スキルの低さだろう。これはもう決定的だ。このハードルをクリアしない限り、面白い情報に接すること自体できない。それほどネットのS/Nは低い。また、今のネットの面白さは「発見」にあるとぼくは思っている。思わぬ情報や最新のニュースに接する面白さ、自分の興味が広まったり深まったりする面白さ、自分とは違った考えに触れる面白さ…。それが一般的に娯楽たり得るかといえばこれは正直微妙だ。きっとテレビくらいで十分だという人がほとんどに違いない。

実は、ひとつだけ他に有効な代替物がなく、しかも一般的に魅力的なコンテンツがネットにはある。コミュニケーションである。その機会をネットは劇的に拡大してくれる。だから、コミュニケーションツールとして、mixiやブログは一部のリア充を取り込むことに成功した。ただ、そういう人たちがインターネットを使いこなしているとは限らないとぼくは思う。そして、オンラインでのコミュニケーションに飽きたらまたネットから遠のいてしまう。そういう話はよく耳にする。逆にmixiがきっかけで情報ジャンキーへの道を歩み始めたという人をぼくは知らない。

リア充を取り込む代替不可能な魅力。決定的に欠けているのは恐らくこれだろう。

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検索サイト=YAHOOしか知らない。
だからYAHOOが上のほうに登録してくるサイトへしか行けない。

ホームページを変更できることを知らない。
だからMSNからリンクの張ってるところへしか行かない。

> pさん
そういえばうちの母なんて、Yahooがパソコンに入っていると思ってますね。あれもウェブサイトの一種だということが解からないらしいです。だから、古いパソコンと新しいパソコンで検索できる情報量が違うと思っている節がある。もちろん、起動時のホームをデフォルトのMSNからYahooに変えたのはぼくですし。知らない人というのはとことん知らないし、特に知りたいともその必要があるとも思わないんでしょうね。

じゃあ逆に自分たちがこの世界にどっぷりつかってしまった原因・きっかけは何だったろうか?
それは何故所謂一般人には通用しないのか?
というのを把握しておくのも必要ではないかと。

それと、ケータイから利用してるのって俺が思ってるより少ないですかね?

> itachiさん
きっかけは人それぞれだと思いますが、ぼくの場合はある趣味のサイトでチャットに参加したことでしたね。そこでICQの存在を教えられて、会ったこともない人たちとどんどん繋がっていくことに酷くワクワクしたことを覚えています。

ケータイについては、ぼくもハッキリしたことは分かりませんが、2ちゃんねらに代表されるようなPCもケータイも使いまくるヘビーユーザー系と、モバゲーやmixiにだけはハマってるというようなライトユーザー系に2極化している感じは受けますね。後者は数もそこそこいるようですが、インターネットをしているというよりは、モバゲーというもの、mixiというものといった感じで、局所的な利用に留まっているように感じます。…ただの印象論なのであまり自信はありませんが。

私の周りだとyoutubeやニコニコでネットにはまる人が多いです。
ゼミでゴールデンエッグズやニコニコのネタ動画が流行ってたり、普通の子がエヴァやハルヒを見てたりするんでびっくりします。
元からのオタクとしてはどこまでカミングアウトするべきか悩みます。
大学生だとレポートだのなんだので頻繁にネットに繋ぐので、特殊な例かもしれませんが。

> meruさん
ああ!Youtubeは確かにありますね。ぼくの周囲でも、あまりネットに興味のなかった人がYoutubeで好きなアーティストのPVを見たり、変なネタ動画を見たりして喜んでます。ただ、そこからソーシャルブックマークを使ったりRSSを活用したりするような進化は今のところ見られませんね。この手のネット利用はウェルメイドな娯楽を求めるという意味で、何となくテレビを見たりiTunes Storeを使ったりすることの延長線上にあるような気もします。

ネット使うようになったのは6、7年前だったかなあ
例によって例の如くYahoo関連しか見てなかったけど、何処ぞのサイトから2ちゃんねるに派生して・・・
「ググる」を覚えて一気に視野が広がったんだったような違ったような
Yahoo以外の検索サイトを利用するようになるだけで簡単に面白味が増すと思うんですが、そこまでが遠いんでしょうか?

> 浅く斑に広くさん
Yahoo以外の検索サイトを使うことそのものよりも、そういう選択肢を持つに到る過程で、すでにある種のネットリテラシーが身についているということなのかもしれません。その意味では、「ブラウザ起動したらとりあえずYahoo」から「Yahoo以外」または「Yahooとそれ以外」になる切っ掛けのない人は結構多いんでしょうね。

youtubeやニコニコにはまって・・・という人は確かに居ますね。でも、ただニコニコを見るだけでそれ以上に進まない人も多いと思います。趣味や勉強に関することではよくネットを見るけどそれ以外は見ないという人も居るでしょう。何らかのきっかけで『必要ではないけど面白そう』なことを検索し始めてしまった人だけがジャンキーとなるのではないでしょうか。

> 燐寸さん
youtubeやニコニコの面白さに触れた人たちをその先に進める魅力…これが難しいんでしょうね。『必要ではないけど面白そう』なものを捜し始める人は、何か切っ掛けがあったり、現状のネットが持つ魅力に感性が合っていた人ということになるのかもしれません。そして、多くの人は現状のウェブに対して『特に必要ではないし面白くもない』と思っているのかもしれません。

>その検索スキルの低さだろう。
ああ、なるほど・・・確かにそうですね。
使う人によって便利さが変わる「箱」がパソコンですよね。
テレビなどの受動的ツールではなく能動的なツールですから。
新たなソフトをインストールしたりとかハードルが高すぎるんでしょう・・・

近道は使う人の興味があるジャンルで「こんなに便利なことが出来るんだよ」と実践して見せて興味を持たせるのが一番でしょう。
映像だったり音楽だったり写真だったり料理だったり

パソコンの魅力の一部であるネットとなると更に難易度は高いでしょうねぇ・・・

> Mさん
ネットに便利と面白いの両方を感じる。それが使い込むかどうかの分かれ目なのかもしれません。結局、便利から入ってそこから抜けられない人は、たぶん必要なときだけ使うということになる。高いハードルを越えるための原動力は、必要よりも期待なのかなと思います。何か面白いものがあるんじゃないか。そういう期待があって初めて、人は新しい物に積極的になるんじゃないでしょうか。きっかけを与えるのに、その人の興味に訴えてみるというのは、なるほど、正攻法かもしれませんね。

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