桜満開の折、久々にNikon D80で遊ぶ。

桜の花花見BBQの企画が倒れた。

どうやら花は、この週末がピークである。花冷えは肌寒いどころではないし、天候もいまいちすっきりとしない。けれども、こればかりはタイミングである。逃せば今年の桜はもう拝めない。来年咲くのは来年の花である。ならば見ておかない手はないだろう。

予定がなくなって、すぐに別の予定が立つほどアクティブな性質ではない。暇である。そういえば、折角買ったカメラが箱の中に鎮座ましましたままになっている。大体、写真みたいなものは、結局のところひとりでしか楽しめないものである。ちょうどいい。さっそくNikon D80を抱えて出掛けることにした。

幸い、遠出せずとも近所に桜が見ものの公園がある。のんびり歩いても10分ほどの距離である。トートバッグにカメラと傘とハンドタオルだけを放り込んで家を出る。朝方まで降っていた雨もどうにかあがり、薄曇りの空の向こうに陽の光が透けて見える。空気は澄み、景色の輪郭が濃い。

家々の屋根を見あげたり、花壇を覗き込んだり、野良猫を目で追ったりと、半ば不審者の体で公園までの道々をそぞろ歩く。日曜の朝である。人通りは少ない。多少奇矯な動きをしたところで、見咎める人もないだろう。まあ、見咎められても構いはしないのだけれど。

一眼レフカメラなんかを手にした以上、人目など気にしてはいられない。しかも、こちとら右も左も分からないズブの素人である。今はとにかく気になったものは何でも撮る。何枚でも撮る。とにかく撮って、カメラに慣れる。そこから始めないことには話にならない。それにはまず見ることだ。

とはいえ、今日の一応の目的は桜なのだし、公園に着くまでに力尽きては元も子もない。きょろきょろしつつも、まっすぐ目的に地に向う。途中、墓地の桜に心惹かれたけれども、これは絵よりも連想に惹かれただけのことだろう。一般に死と桜は結びつきやすい。

公園に着いてみると、まさに今こそ桜花爛漫。

花冷えの花曇りとくれば、むしろ花見日和というべきだろう。晴天の桜樹の下で酒宴に興じるのも悪くはないけれど、ただ花を見るなら雨後の曇天もまたいいものである。重く垂れた枝先に、雨滴を載せた花がしっとりと咲いている。樹皮も心持ち黒々として艶やかに見える。

樹に寄りかかったり、岩に登ったり、樹の根元にしゃがみこんだり、撮りたいものを撮ろうと思うと案外に体を使う。それでも寄り切れなかったり、取りたい角度が得られなかったりする。これまであまり気にしたことはなかったけれど、写真というのはずいぶんと不自由なものである。

写したいものを写せないこともあれば、写したくないものが写ってしまうこともある。場所取りのブルーシートなどかなりの曲者で、こいつのせいで桜木立の全景がまるで撮れない。きれいな花弁を見付けてフレーミングしてみると、どうしても汚い街燈が入ってしまったりする。

そんな不自由にもめげず、公園内をうろうろと徘徊し、貪欲にシャッターを切り続けること二時間弱。ブルーシートの持ち主たちが三々五々集まってくる。潮時だ。このうえ酔客までがフレームインしてくるようではあまりにもやり難い。今日のテーマは花に浮かれた人々ではない。

多少食い足りない気持ちはあったけれど、帰る道々にもスナップのチャンスはあるだろうと帰路に着く。行きとは違って、カメラはスタンバイしたままだ。土の盛られた畑、竹竿に絡まる蔓草、色褪せた滑り台、見捨てられたような公園のベンチ。気侭にシャッターを切って歩く。

ずいぶん撮ったように思ったけれど、確認してみるとせいぜい200枚と少しくらいのものだった。ほとんど意に染まないデキである。コンパクトデジカメが一眼レフになったからといって、いきなり写真が巧くなるわけではない。性能が上がることと良い絵が撮れることとは別の問題である。

まあ、思うに任せないところが、遊びの面白さでもあろう。

たまにはこういう休みも悪くない。


【関連リンク】
今日の成果を14枚ほどfotologueで公開

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